■ □ ■電化製品に萌えて何が悪い■ □ ■ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほんとお前むかつく!」
顔を真っ赤にして怒っているのはオーブントースターことトース。小柄な体いっぱいに腹を立てているその姿は可愛いの一言に尽きた。
その目の前で冷めた一瞥をトースによこしているのは電子レンジのレンジだ。
トースはめいいっぱい体を大きく見せようと胸を張っているのに対してこちらにはなんら気負った様子も見られない。
むしろ相手にもしていなかった。
「…なにが」
うるさそうな様子をみせなかがらも返答を見せる。だが今見ている本から目を放す様子は見られない。それがまたトースの気に障ってしまった。
「その態度がムカツクんだよ!!お前のせいでおれまるっきり役立たず扱いじゃないか!」
「そのことに関して俺に何の落ち度もない。低脳な自分を恨むんだな」
冷たい容貌を持つレンジがそう言うと余計に冷酷に見えた。一瞬その様子に目に見えて怯んだがトースはそれでも果敢に挑んだ。
「〜〜〜〜〜〜っ!!!ムッカツク〜〜〜〜!!マジムカツク!」
「その程度のことしか言えず、熱くなるしか能がないから低脳だというんだ」
鼻先で笑うと再びレンジは手元の本に集中し始めた。
「読書の邪魔だ」
「変な光線かなんかでお前がいいっていうやつを増やしてるだけのくせにぃ!!!覚えてろ〜〜〜〜!!」
結局攻撃も反撃もまともに出来ずにトースは顔を真っ赤にしたまま、どすどすと足音も荒く立ち去っていった。
あたりに再び静寂が訪れた。
そこにレンジに近づいてくるものがいた。
炊飯器のジャーだ。
「なんだかんだ、あいつしか出来ないことを認めてんだろ?」
「何のことだ?」
レンジはニヤっと意味深な笑みを浮かべた。
「へ〜へ。あぁなるのが楽しいわけだ」
呆れ返った様子を隠しもせずにジャーは顔をしかめた。
「顔を真っ赤にして威嚇する姿は可愛いもんだ。ちょっとすごんだら怯えて涙目になるんだぜ。そのくせ威嚇をやめないからぞくぞくするね」
人の悪い笑みを浮かべるレンジを見てジャーは哀れむ顔をした。
「そんなひねくれた愛情の示し方であいつがわかるわけないじゃん。あいつ単純なんだからさ…」
「ははははっ。理解されたら面白くないじゃないか俺の手の上で転がってりゃいいんだよ」
「悪趣味」
「あれ、に関して俺はいい趣味してるつもりだけどね?」
「へ〜へ〜ごちそうさん。ったく口出すほうが馬鹿らしい……」
「相変わらず気を回しすぎだ。脳がぬくもりすぎてオーバーヒート起こすぞ」
「性分だ。ほっとけ」
ジャーはレンジの側を離れ立ち去っていった。
それを見送ると再びレンジは手元の本に目を落とした。
桜の舞い散る中再び挑んでくるトースを楽しみにしながら………
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