■ □ ■幸せな村の愛の樹■ □ ■ ・・27・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それで…儀式必要?」
愛樹は恐る恐る聞いた。
「そうです。この模様が双方にある時のみ結界は我らを通すのです。双方が子どもを望んでいれば何度でも行く事が出来ます」
レセスターは自分の左手を見せてくれた。そこにはアメジストの様な鮮やかな模様が入っている。
「わぁ…」
アーリアも見せてくれた。そこには翡翠色の模様が入っていた。
「模様、やっぱり、違う」
「そうですね。でもアイキのようなグラデーションの入った模様はもっと稀少なものになるでしょうね」
レセスターは柔らかく笑み、差し出された愛樹の手の甲の模様を見ていた。
「こんなに鮮やかな模様を見たのは初めてです」
アーリアもため息をつくようにしながら眼を輝かせてみていた。
二人とも魔術を嗜む者としてこの様なものに対して反応が強い。
愛樹もこの模様を気に入っていたので褒められて悪い気はしなかった。
照れたように頬を紅くした。
「ふふふ。この模様を喜ぶ事ができているのであればきっとエディとの夫婦仲を心配する必要はありませんね」
レセスターはそういって微笑みながら愛樹の顔をみた。
きっとうれしい事を言われたはずなのに…なんとなく胸がツキっと痛んだ。
正直愛樹にはどうして痛かったのか分からない。
胸元に手を当てたがすぐにその痛みは消えてしまったのでたいしたことはなかったのだろうとすぐに忘れた。
レセスターもアーリアもその仕草を照れによるものだろうと微笑むばかりだった。
「さて今日のお勉強はこれ位にして…お茶にでもしましょうか?」
レセスターは広げていた資料を片付けながら言った。
「ぅえ?…あ…もうあんなに…日が…」
愛樹はびっくりした。話に夢中になっていたので気が付かなかったもう勉強を始めてかなり時間が経っていたようだ。
噛み砕いて愛樹に教えていた事もあり通常よりも時間がかかってしまうのは仕方がなかったがこんなに時間が経っているとは思いもしなかった。
「こんなに集中して聞いてくれるのは先生としては嬉しいものですね」
レセスターはにこにこと慌てている愛樹を見つめた。
「私では満足な説明ができなかったかもしれませんが…」
アーリアは小さな笑みを零しながら控えめだった。
「ううん。分かりやすかった、ありがと」
アーリアも笑顔で愛樹の顔を見ていた。
初日の授業はこれでお開きになり、腕白なレオルドを相手にしていたアリクがほっとしたとかしていないとか。
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