■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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「さて、話が途中でしたね。子どもを生む為にはまず神殿で伴侶の儀式をしないといけません。これをアイキさんはエディとしていますよね?」
「はい、しました」
こくこくと愛樹は頷いた。


「伴侶の儀が終わったらアイノキの実を頂く事ができます。これはいつでも望んでアイノキがある神殿に伺えば自分達で取りに行く事ができるのです」
「えと…儀式しないと…もらえ、ないの?」
愛樹はレセスターからアーリアの方を向いて尋ねた。

「はい、そうです。」
「昔ね…悲しい事件が起きたのですよ」

レセスターはそっと囁くように言った。

「事件?」
不穏な言葉に愛樹の声も自然強張りがちになってしまった。


「その実を使えば子どもができるという事が『光の御使い』によって教えられました。その方法も」
「方法…」
愛樹は静かにレセスターの話に耳を傾けた。

「その実は一見したら二つの果実がくっ付いているように見えます。紅い実と青い実…子どもを宿す方が紅い実…こちらには種子が入っています。宿させる方は青い実です。それをどちらも食した後………種子を受け入れる場所から体内に入れるのです。その種子の中で子どもが宿り……仮子宮となるのです」
愛樹は絶句し赤面した。


自分のいた世界では実を食べただけで子どもができるなんて十分非現実的ではあるが…方法が結構飛びぬけたものであるのは確かだ。


(……正直……種子を入れるって…めちゃくちゃなんだけど………)


「えと…結局事件って…」
「それはですね。このような方法で子どもができるのであればと…人口が一気に激減していた事もあり…無理矢理この実を食させて種子を入れ強姦し子をなそうとする不届きな輩が現れたのです」

「なっ!!……それ…酷い……」
「本当に痛ましい事です…」
アーリアは我が事の様に瞳を沈ませた。


「結局そのような方法では子どもができる筈も無かったのですが…これ以上勘違いした者が現れないようにとライジット様が樹に結界を、そして契りの儀としての水晶を発現されたと言われています。

残念ながらこちらも水晶を発現させたのがライジット様という確証は無いのですが結界に通じるものがあるので恐らく…となっています」

レセスターは感情を滲ませない様に淡々と説明をしていたがその昔の人が犯してしまった罪に対して憤りを感じているのが手に取るように分かった。

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