君を望む ◆  

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僕から「好きです」って告白した。


彼…瀬尾 信二(せお しんじ)はかったるそ〜に

「あ?別にい〜よ。暇つぶしになるし」

と承諾してくれた。少し不良っぽい彼の事だから…きっと気持ち悪いって…殴られるかもしれないと覚悟していたから……少し拍子抜けした。


暇つぶしって言っていたけど…少しでも彼の側にいられる事が嬉しかった。




「おいっ!そこのチビついてこいっ」
彼は僕…藤崎 雅也(ふじさき まさや)って言うんだけど、もう彼との関わりは3ヶ月にもなるのに…僕の事を名前で呼ばずに『チビ』って呼ぶ。でも僕を呼んでくれる彼が嬉しかった。

僕も彼の名前を呼んでみたいけど…暇潰しの相手に馴れ馴れしく名前を呼ばれたら怒って側にもよせてもらえなくなるかもしれない。

そんな事になってしまう危険性は少しでも無くしたかった僕は彼の名前を呼んだ事がない。そのかわりいつも心の中でうるさいほど彼の名前を連呼している。心の中を覗かれたり、音を聞かれたりしたら僕はあまりのいたたまれなさに憤死してしまうかもしれない。

「あっ!うん、今行くから…」
慌てて今の授業に使っていた教材を片付けて弁当を取り出し先に行ってしまった彼を追いかけた。



「ホントにおまえはトロくせぇな。さっさと来いよ」
そう言って彼は僕の前をスタスタと歩いていく。彼はそんなに急いでいるつもりは無いのだろうが…彼と僕の頭一つ分近く違う身長差のせいで僕は小走りしないと彼に追いつけない。そうして彼の背中を追って走っているうちに屋上についた。

彼はすでに建物の影に入る辺りに腰を降ろして持っていた袋からすでに昼食となるパンや飲み物を取り出していた。

「ハァ…ハァ…」
僕は息を切らせながら彼に近過ぎない位置に腰を降ろした。近過ぎてもいけない、離れ過ぎても彼に不審を抱かれてしまう。いつもそれには気をつけていた。

「ほんっとトロイな。お前それで生きていけんのかよ」
彼はあぐらをかいてもそもそ食べながらこっちをみている。

「うん、なんとかね」
僕はようやく落ち着いてきた息の間から彼に答えた。

そして僕も弁当を出して食べ始めた。もそもそと食べていたが…彼はいつも購買のパンか近所のコンビニ弁当ばかりだ。今日は少し…彼も食べないかなと多めに作っておいた。

弁当は基本的に僕の仕事だ。だからみんなの分を作るついでに少し増やしておいたのだ。お箸も持って来ている。弁当の袋から僕の食べている弁当と同じくらいの弁当と箸を彼に差し出して…思い切ってみた。

いらないと言われたら次から用意しなければいいのだ。昼ご飯にウザいって誘ってくれなくなるかもしれないけどいつもコンビニ食の彼の体が何より心配だったのだ。


「あのさ…これ……食べない?」
僕は思ったよりは声を震わせずにすんだが…もし側にいられなくなったら…という怯えを持っている事が…彼にわかってしまったかもしれない。

彼は暫く無言で食べるのをやめてじっと見つめている。この沈黙は多分数秒から…1分もない程度だったと思うけど…僕にはすごく長く感じた。先に耐えられなくなったのは僕の方だった。

「えっ…と…ごめん。迷惑だったね……」
そういいながら、慌てて弁当を弁当袋の中になおそうとした。恥ずかしい。思い上がっていたのかもしれない。そう思うと目線も上げられずに紅くなっているだろう顔を隠すように俯けて片付けようとした。

「誰がいらないと言った」
彼の手が僕の二の腕を掴んで今していた事をやめさせた。彼に触れられた事で頭がいっぱいだった僕には彼の言わんとする事を一瞬理解できなかった。

「え?」
「いらないなんて言ってないぞ」
そういって中途半端に片付けられていた弁当をさっさと取って彼は食べ始めた。

食べ終わった彼は「卵焼きは塩がいい」と言っただけだったが感想を貰えると思ってなかった僕は嬉しかったし、彼の言葉を聞く限り次も作っていいみたいで安心した。



「おい」
パンも弁当も食べ終わった彼は僕が食べ終わると声をかけた。彼の食事量は僕の軽く二倍あるのに…僕より早い…僕が食べるのが遅いのもあるけど…食べ終わると彼は昼寝をする。僕がその枕になるのだ。


両足を投げ出した状態のフトモモの辺りに彼は頭を乗せてすでに昼寝の体制に入っている。僕の足なんて女の子みたいに柔らかいわけでもないから…固くて寝られたものじゃないと思うが毎回彼はそれを要求してくる。


暫く経つと彼の寝息が聞こえてきた。そこまでくると僕の緊張も溶けて力を抜く事ができる。

 

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