☆ ★恋は盲目 ☆ ★

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静寂
きょるるる〜……



「お腹空いた…」
「当たり前だろ?何だよこれ…」
俺は目の前にあるゴミの山に呆れた。


「………なにって…ビダーinゼリーのカラだよ」
「それ位知ってるさ。ここにそのゴミの山がある事が問題なんだよ」
「そうなの??」
「まさか三食これだった事ないよな?」
ジロリと横目であいつを見たら…


「……………………そんな事ないヨ?」
「その間と語尾が怪しい」
俺は溜め息を隠せなかった。俺が二週間ほど夏休みで実家に帰宅しただけでこれだからな。



「で…でもね三食ってのは一〜二度くらいで…他の日はちゃんと弁当とか食べてるんだよ?」
彼は慌てたように言うが…多分弁当食べたとしても他二食は栄養補助食品だろう。



「ったくお前は他の事に関してはそれなりなのに…どうして食に対してだけはそうズボラなんだか…」
「ごめんなさい…」
「飯作ってやるからそこ片付けとけ」
そう言って俺はキッチンに入り食事の用意を始めた。







あいつ、小池亮平(こいけりょうへい)に出会った時からが衝撃的だった。

大学の入学式の隣が亮平だったのだが…式がようやく終わり、ほっと溜め息を付いて立ち上がった途端こっちに倒れてきたのだ。生憎亮平には友人と呼べる人間は、彼自身が地方出身という事もあり、いなかったのでたまたま隣でたまたま寄り掛かられた俺が保健室に連れていき尚且つ病院に養護教員と一緒に連れていかされるという被害を受けたのだ。

診断結果は栄養失調による貧血と過労。

目の前で寝ている奴は一体いつの時代からタイムスリップしてきたのか…という感じだった。

話しを聞くと少なくともこちらにきた2週間はまともな食事をきちんととっていなかったようだ。



亮平は高カロリー点滴を受けながら医者ではなく俺の説教を聴く羽目になっているがいきなり事件に巻き込まれた俺の心情を思えば優しいもんだ。


医者も俺の意見に文句は無かったのだろう苦笑しながら許してくれていた。お互い住んでいる所も近く専攻も一緒だったので必然的に親しくなっていった。

付き合っていく内に分かって来た事だが…亮平は食に関する事以外は割とまともな方であるという事だ。そりゃ男だから洗濯物を何日か溜めてしまったり片付けが多少ズボラな部分はあるがあくまで規格内での事だ。






なんとか夕食を食べ終わった。亮平の部屋で食事を作ろうにもまともに料理器具どころか肝心の食材さえない。なので結局俺の部屋に場所を移して夕食にしたのだ。



「ったく…いくら必ず三食何か口にしろといわれても…」
三食栄養補助食品じゃあ取れる栄養はたかがしれている。
「ごめん…」
亮平は縮こまっている。元々食べない方みたいで俺からみたらかなり少食だ。

だから無理して食べなくてもいいやって気持ちになるのだろう。
「ま…なんにせよちゃんと約束を守って頑張ってたのは認めるよ」
頭を撫でるとさっきまでの済まなそうな顔から笑顔が零れた。

畜生可愛いじゃねぇかっ…例え何か口にしろと言われて三食栄養補助食品を摂取(食べたとは断じて認めん!)するようなおバカだったとしてもっ







「お風呂沸かしてあるから入ってね。はい着替え」
亮平は褒められた事でうきうきしているのがよく分かる。お互いよく部屋に泊まるから替えの服も置いてある。

しかもしょっちゅう泊まっているから亮平にとって、ここは第二の自宅だ。俺に料理をさせるのが心苦しいのか、その間に風呂を沸かしていたのだ。

いそいそと服を持って来る姿が…また可愛い…まさかこんな風に自分がなるなんて思ってなかった。

もともとはその気があるのは昔から何となく分かっていたので何度かその道のバーに顔を出した。…女との体だけの関係もした事がないとはいわないが…到底満足できなかった。


だから…調べて行ってみたのだ。でもそこでパートナーを探すというのもしっくりこなくて…余計にストレスになるという事もありそのバーに行くのは数回で限界だった。


少しそういう方面に淡泊なんだろうという結論に至り…特に困ってもいないので自分のパートナー探しは一時的に鎮静化した。




ところが…思わぬ形で相手ができた。衝撃の出会いから亮平は何に対してもズボラなんだろうと思ったが友人の一人として付き合っていく内に違うと分かり…少し人慣れしていない感じはあるが悪い印象は抱かなかった。



むしろあぁ…こういうのが恋とかいうやつなんだな…とこっ恥ずかしい事を大真面目に思ってしまった。食事にかこつけてお互いの部屋を行き来したり泊まったりする口実を作り…虎視眈々と亮平を搦め捕る準備をしていた。


ある日亮平が家で飲もうというので…その時にこんな気持ちは初めてなんだとか、可愛いだの囁いて…テクを駆使して…卑怯にも前後不覚の酔っ払いを陥落したのだ。


なにもかも初めてっぽかったので、もっと詰られたりするかと思ったがあっさりと亮平は俺を受け入れてくれて…俺の言葉遣いが悪いのでそうは見えないかもしれないが友人以上の付き合いをしている。



さて飯を食べて満腹。



風呂に入ってさっぱり。



歯を磨いてすっきり。



しかもここは一人暮しの俺の部屋。そして側には愛しい亮平。一人分しかない寝具。

電気を消し、何となく色っぽい空気が流れ始める。さっき食べていたので結構顔色もいいし…大丈夫かな…?

亮平もさり気なく俺の腕にくっついてきているし…




二週間ぶりの亮平だ…

 

 

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