■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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朝食もすでに隣の部屋に用意されていた。


食べる時はやはりエディセルドが色々とお茶を用意したりなど世話を焼いてくれた。


なんとなくエディセルドは父親や兄のような包容力があるので…こんな面倒ばかりみてもらうのはよくないよな…と思いながらも愛樹も多少甘えてしまっていた。


そうして和やかに食事を終えた。





「ねぇ…エディセルドさん。今日仕事は大丈夫なの?今から行くの?」
食事を食べ終えるとさっきから気になっていた事をエディセルドに訪ねた。


「今日は休みをもらったんだ」
エディセルドは少し逡巡するように沈黙をした。




「アイキ、昨日の今日でいきなり悪いが神殿に契りの儀式に行きたいと思う」
かなり苦渋に満ちたような表情をするので反って愛樹の方が覚悟をすぐに決める事ができた。


「エディセルドさんが俺と伴侶になる事をいいと思ってくれるならいつでも大丈夫だよ。どんな事をするの?俺こっちの流儀とかそんなのわかんないから…」
そういって愛樹はからりと笑って見せた。それを見て幾分ほっとしたようだった。



「そうか…儀式自体は簡単だ。神殿の契りの祭壇で神官の前で契りの言霊を交わしあった後に二人で聖石に触れる。するとお互いの手に証が現れる。それで終わりだ。人によってはそれを見せる為の宴を開いたりする事があるが…しない人も多い」



「はぁ…そんなに簡単に…」
愛樹は異世界の婚姻の形を聞いてファンタジーだな〜と思っていた。


「簡単といってもお互いのどちらかが少しでも納得していないと儀式は破綻する」
「へ〜…」
要するに入籍して結婚式を上げた後に披露宴をするようなものか…と愛樹は納得した。


そして相手が納得していないと婚姻届を出す事ができないと…



「さしずめ俺達は入籍だけの地味婚という事になるのかな?」
エディセルドに聞こえないような声で愛樹はボソッと呟いた。



「神殿に行く為に服と…嫌かもしれんがその髪は少し目立つから帽子を被って欲しい」
「別に帽子くらい大丈夫だよ」
「そうか。では着替えたら早速出かけよう」




愛樹はもちろん馬に乗れないのでエディセルドと一緒に乗って緑に囲まれた少し小高い山の中にある神殿にいった。


そこは今まで愛樹が見た事のある現世での教会などに比べて遥かに立派で重厚だった。もちろん大きいのもあるが、華美な所は一切なく必要な所だけを凝縮したような雰囲気があるからかもしれない。



「うわぁ…すごい…」
目深に被らされた帽子の間からその様子を見てため息のような声になってしまった。



「初めて会った場所に居ただろう?彼がセンジハー大神官だ。彼は先代に比べても本当にできた人柄の人間だ。何代か前は私利私欲ばかり求める大神官だったらしくこれとは比べ物にならないほど悪趣味だったらしい」
そんなエディセルドの説明を聞きながらあの初老に入った人が大神官かと感心していた。



何となくよぼよぼのおじいさんが大神官のイメージが愛樹の中にあったからだ。


もしかしたら彼は神官の中では異例の出世をしたエリートなのかも…など愛樹は思っていた。馬から下りて二人は神殿に入っていった。

 

 

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