■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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愛樹もココリに対して最初、硬めの態度を取っていたが少しずつ慣れていった。


毎日顔を合わせて一緒に絵本を見たりしているのもあるだろう。それにココリは屈託のない表情を見せてくれているし、心配りも細かく出来る少年だった。


愛樹が着替えの時や、風呂での世話など、極度に触れられるのを嫌がることも察してそんな時は絶対に手を出さない。もしかしたらエディセルドに聞いているのかもしれない。


大抵の事は自分で愛樹がしている。だから食事の事や衣類の洗濯運びの手配などをココリはしていた。



その日も食事をした後に絵本を見たり、簡単な話のやり取りをしたり、ペンで紙にエディセルドに書いてもらったお手本を見ながら文字の書き取りをしながら過ごした。


勉強ばかりでは飽きてしまうので、この国の動物や植物、昆虫に爬虫類などがいっぱい乗っている図鑑を何冊か見たりして楽しんだ。



「愛樹、ココリとは仲良くしているか」
「なやよく、してる」
「仲良くだ」
「なかよく」
愛樹はエディセルドの指摘に納得したようにうんうんと頷いている。


全ての言葉を聞き取るように愛樹はいつも耳をそばだてるようにしている。本当に簡単な幼児向けの絵本位は自分で読むことが出来るようになっていた。相手の言葉も聞き取る事もできるようになってきた。


ただ発音をするのは難しいようで時々妙な言葉になってしまったりするのだ。言葉と文字を一緒に覚えようとしているので少し時間がかかっている。



「今日は何を読んだんだ?」
「…ん…と…これ」
薄い大きな文字で書かれている古びた絵本を出してきた。それでも少し前に読んでいた本よりも文字数やページ数が増えていた。



「これは…私が用意したものとは違うな?」
「ココリ、…くれた」
ココリは自分の家にあった昔ココリ自身が読んでいた絵本を持ってきたのだ。それだけ愛樹とココリが仲良くなってきているという事なのかもしれない。


「ココリ、好き、これ」
「そうか…ココリはこれが好きだったからアイキの為に持ってきてくれたんだな」
エディセルドは愛樹が触れられる事に多少の緊張が見られることがあるのに気がついていた。


エディセルド自身に対してはそんな様子は見られない。ココリといる時に見ていると愛樹は触れられるのをエディセルドと一緒に居るときよりも少し避けている。


それでも愛樹はココリと楽しそうに会話をしたり、勉強をしたり、食事を楽しんでいる。愛樹に遠まわしにそれとなくいっても…無自覚だった。


少し接触嫌悪の気があるのかもしれない。エディセルドはそう思った。まぁ神経質になるほどではないだろう。


愛樹はもともと一般の家庭で育っているようなので侍従という者に対してどう接していいのか分からない所があってもおかしくはない。それがあの少し避けたりする態度に出ているのだろう。



{まぁなんにせよココリと仲良くなれたのならよかった。やはり青年をつけずに少年にしてよかったな。年齢が近い事もあって親しみやすいんだろうな}



ちょっと愛樹が聞いたら殴られそうな事を思いながらエディセルドは愛樹が一生懸命ココリのくれた絵本を朗読するのを聴いていた。

 

 

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