■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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それから穏やかに一ヶ月が経ち、エディセルドは気の置けない仲間達を屋敷に呼んでいた。


「なんで…そんなにゆっくりしゃべるんだよ?お前時々そうなるけど…」
金髪をかなり短く切ってツンツンと立たせて翡翠色の瞳をした体格のいい青年がソファにふんぞりかえるように座りながら、エディセルドに不思議そうに話した。


「あぁ…アリク…私はゆっくり話していたか?」
「そりゃぁもう。懇切丁寧に発音がしっかり理解できそうなくらいだ」
「そうか」
そう言って一人座り様のソファに座っているエディセルドは苦笑した。


「もしかして…伴侶になられた方の為ですか?」
こちらはアリクの隣にきちんと座っている、金髪に緑を流し込んだような長い髪を無造作に一つに後ろに束ねているだけのヘーゼルの瞳を持つ青年だ。エディセルドやアリクと呼ばれた青年よりも頭半分弱ほど背が低い。華奢な印象があるので実際よりも小柄に見えた。


「そうだ」
ため息を付くようにエディセルドは答えた。


「大事にされているのですね!」
そういって新緑の瞳をキラキラさせている少年はアリクの弟にあたるアレクだ。アリクとアーリアの隣に座っている。ようやく18歳になり軍隊へ騎士としての所属をゆるされたのだ。とはいいつつもアリクの弟だけあってかなりの体格の持ち主であり兄と同じ金髪を兄より少し長めにしている。



「エディがまさか伴侶を得るとはな…」
そう笑みを含ませながらいうのはエディセルド達よりも少し年上の青年だ。薄茶色の髪を無造作に後ろに流して蒼い瞳を持っている。体格はアリクほどの大柄ではないが均整のとれた長身である。


「クラウゼル。からかっちゃダメですよ」
そう言って嗜めたのが肩までのストロベリーブロンドに菫色の瞳をもつレセスターだ。こちらはアーリアとそう変わらない身長あるが、細くてもきちんと鍛えられているのが分かる。


「ダメねぇ〜」
可愛い話し声はその腕の中にいる小さな子どもからだ。こちらはストロベリーブロンドに蒼い瞳の2〜3歳位の幼児だ。彼の名前がレオルドだ。



彼ら二組のカップルこそがエディセルドに契りの儀式がどんな物であるかを教えてくれた人物達だ。彼らはエディセルドにとって部下にあたるが、まったくの曇りも無く信頼できる親友達なのだ。そして仕事の方面でも彼ら以上に全てをこなす事が出来る人間もいない。腹心の部下達なのだ。



「あんだよ…俺が懇切丁寧にアーリアとの儀式の話をして伴侶はいいぞという話をし…挙句の果てには相手探しに飲みに誘ってもなびきもしなかったくせに。骨抜きか?」
少し意地の悪そうな顔をしてアリクはエディセルドの顔を覗き込んだ。今は他に人間がいないエディセルドの屋敷にいるから彼らは少し砕けた話し方をしている。

他の部下の手前いくら昔からの親友といえども示しが付かないので他ではかなり改まった話し方をしている。


「骨抜きかどうかは分からんが大事にはしているかもな」
そう言ってエディセルドは笑った。


その言葉に仲間達は驚きを隠せなかった。エディセルドがこんな風に笑う事も稀であった事もあり、今まで絶対に伴侶は要らないと豪語してきた彼をこんな風に変えてしまった相手に尊敬の念すら抱いた。


もちろん彼らはエディセルドがその相手を普通の伴侶として迎えたのではない事を知っている。


王のしでかした事も。


この事はここにいる彼らだからこそエディセルドは話したのだ。他にこの事を知っている者はエディセルド達以外にはセンジハーと王しか知らない。


「よし!見に行こう!」
アリクはもう立ち上がっている。


それに「俺も!」とアレク。


それにクラウゼルとレセスターも同調した。


おろおろしているのはアーリアただ一人だ。エディセルドは苦笑するとやる気満々の彼らに声をかけた。


「今日はもともと皆を会わせるつもりだったのだ…行こうか」
そういってエディセルドはアーリアを促して言った。


何故かアリクとアレクを先頭に御一行は隣にある愛樹の部屋へと向かった。

爆発的に登場人物が増殖した…

 

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