■ □ ■幸せな村の愛の樹■ □ ■ ・・13・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おじゃましまーす」
そう言ってそうっと扉を開けてアリクがまず入りアレクが続いた。
その部屋はしん…と静まり返っており主が不在なのでは…と思わせる雰囲気があった。ココリはエディセルドが言って侍従たちの部屋に戻っていた。
「あれ?いないの?」
アレクがキョロキョロしているうちにクラウゼルとレセスターも部屋に入ってきた。
「ソファに眠っているのではないか?」
エディセルドがアーリアと一緒に最後尾から静かに声をかけたのでアリクとアレクはソファを覗き込んだ。そこには言った通りぐっすり眠っている愛樹がいた。
「……少し…幼すぎんか?」
それを更に後ろから覗き込みながらクラウゼルはエディセルドに話し掛けた。
「少しというか…儀式ができたのだから13歳以上なんだろうけど…こりゃまた…」
アリクが言うとアレクも絶句している。
「不思議な色合いの髪ですね。漆黒とは…」
レセスターも答えた。腕の中にいる子どもも雰囲気を感じたのか息を詰めている。
「綺麗ですね」
アーリアがため息のように感想を言った。エディセルドは苦笑を禁じえなかった。
「ねぇ…エディ兄さん…起こしてもいい?」
アレクが遠慮がち声をかけるのにも苦笑して言った。
「寝起きが悪いがそっとな…」
「そんじゃ…」
そう言ってアレクが手を触れようとした途端、愛樹は目を見開きソファの背を中心にしてバク転の要領でソファの後ろに飛びのき構えを取った。
そして自分に触れようとしたアレクをこれ以上ない醒めた瞳で睨みつけた。
その場に居合わせた人間は皆呆気に取られた。エディセルドも愛樹がこんな反応を返したことがなかったので驚きを隠せなかった。
「…エディセルド……さん?」
愛樹は侵入者の中にエディセルドの姿を認めるとすぐに構えをといて少し安堵した笑みを浮かべた。
「おかえり…なさい……え…と…ともだち?」
愛樹は自分の側に近づいてくるエディセルドに少し気まずそうな笑みを浮かべながら、まだたどたどしいが言葉になってきた挨拶をしてきた。
「すまない。驚かせてしまったようだな。この者達は私の昔からの知り合いだ。アイキに危害を加えたりすることはないから安心していい」
「わかった。ごめんなさい。ちょっと、びっくりした」
エディセルドの手を肩に乗せたまま皆の方に向かって愛樹は頭を下げた。
「…いや…こちらこそごめんな。寝ている所触られたら驚くよな」
アレクは素直に頭を下げた。それに愛樹は寝ている時にびっくりしたが少し好感を持てた。
「オレ、愛樹です。よろしくおねがいします」
皆に愛樹は深々と頭を下げた。
それとともにわずかに残っていた室内の気まずさが払拭された。
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