■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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「小さい子同士で気が合うのかな?」
アレクはそう言って二人を見た。


すると皆の視線も自然とこちらに集まってきた。愛樹はちょっとムッとした。

エディセルドやアリク達は年上に違いないが…どう見ても体格はイイがアレクは年下っぽいのでさすがに子ども扱いされて腹が立った。


「アレク何歳?」
「俺?18歳だ。騎士になったんだから!」
少し得意そうに胸をそらしながらアレクは答えた。


それにますますムム〜としたのは愛樹だ。表面上はそんなに出していなかったが…ふとここで自分の年齢を披露したらこの人達はどんな反応をしてくれるのだろうかと興味が湧いた。


内心ちょっぴりほくそえみながら表情を出さないようにさらっと答えた。
「アレク、オレより、4つ下。オレ年上!」




「「「「「え!!!」」」」」




皆の驚きが見事に一つになった。

思ったよりも反応がよかったが…内心はご立腹だったのは愛樹だ。でもサプライズがかなり成功したので嬉しい気持ちがある分複雑だった。


「エディセルドさんまで…ひどい。いくつ思ってた?」
「13,4歳くらいかと…」
エディセルドも呆然と呟いた。


「オレ…そんなに…小さく、見える?」
ちょっと大げさに泣きそうな顔をして愛樹はため息をついたが次の瞬間にはガバッと顔を上げて言った。


「皆、大きいから、オレ子ども言われる。皆ダメ」
その瞬間、その場にいた皆が笑いに包まれた。


そのなか愛樹はふと思いついたように指折りしながらブツブツと考えていた。そして突然、顔を上げてアレクを見た。


「ごめん。アレク、4歳上違った」
そう言われて皆がやっぱり年下か?とふっと力を抜いた所に愛樹はさらりと答えた。


「今日で5歳上」
そう言って手を広げて見せた。さらにショックを受けたアレクだった。ちょっとしおれ気味だ。


「アイキは今日が生まれた日なのか?そうか…おめでとう、アイキ。」
エディセルドは驚きに困惑しきったように愛樹を見て言った。


「ありがとう。ここオレの国、一年と一緒。数えたら、今日で23歳」
「…ちょっとアイキさん、手を触ってもいいですか?」
そう言ってきたのはレセスターだ。


最初は困惑して逡巡したが愛樹は意を決し、手をレセスターに差し出した。レセスターは淡い光を掌から出しながら愛樹の手をそっと触った。


「……間違いなく今日で23歳の時を刻んでいます」
そう言って触っているレセスターにだけ分かる微かに震えている手をそっと離した。


すると愛樹は大仰にではないが小さく安堵のため息を知らず知らずに付いていた。


「レセスが言うなら確実だろうな…しかし23歳か…お前と6歳違いか…」
クラウゼルはそう言ってレセスターを見た。


「まぁ、エディとは5歳違いだから…丁度いいのでは?」
レセスターは綺麗な笑みを見せながらエディセルドを見上げた。こっちは本当に困惑と戸惑いを前面に出した顔をしていた。



「………5歳下………」
口の中だけでエディセルドが呟くように言った言葉は賑やかな室内ではかき消されてしまったので誰の耳にも届かなかった。

 

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