■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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「ホントのホントに23歳?????」
アレクはまだ拘るように愛樹に聞いている。


本当の事を言うとアレクには今まで年下といえばレオルドが出来たくらいで弟分がいなかったのだ。

全くいないわけではなかったがそれでも下っ端騎士にようやくなったばかりという事もあり、弟分はいなかった。


だから愛樹をみて「オレにも弟分ができた!」と嬉しかったのだ。騎士となってからの色々な事を教えたり、ちょっとした武勇伝を披露したり…とかできるかもと思っていたところに愛樹の年上宣言だ。


こんなに小柄で可愛いのに…と思う気持ちもあるし…5歳も年上なのだ。せめて一歳上位ならよかったのに…理想はもちろん一歳でも年下がいいけれどこの際贅沢は言わないので歳の近い友人が欲しかったのだ。


「ホント。皆…エディセルドさんの友達。だから、オレ、嘘ついたりしない」
そう言ってアレクに笑いかけた。その愛樹の笑顔にちょっと見惚れて…『これで年上…』と内心ちょっとドキドキしてしまったアレクだった。


「そうか…レセス兄さんがいうんだし…ホントだよな…」
ほへ…と気の抜けたため息を付きながらまたもやうなだれてしまった。その様子を見ながら愛樹は『大型犬みたいで可愛いかも…』と思っていた。さすがにこれを直に言ったら更に落ち込ませてしまいそうなのでやめておいた。


「アレク、年上だとオレ、嫌い?」
うな垂れているアレクを覗き込みながら笑顔で愛樹は聞いた。


「そんな事ないよ!!ごめんまたオレ失礼な事したね」
思いっきり顔をあげて首を左右に振って、ついでに両手も振り回しながら大慌てなアレクをみて愛樹は思わず吹き出した。


「あはははっ!!…大丈夫、怒ってない。アレクオレと友達、ね?」
くすくすとまだ笑いながら小首を傾げてアレクを見た。その時は笑いすぎで愛樹の漆黒の瞳にはうっすらと涙が浮かび潤んでいた。


それをみて瞬時に顔を紅く染めたのはアレクだ。


完全に悩殺されたのが周囲の人間にもわかる位だった。





「お〜い…俺の弟、お前の伴侶にメロメロになっちまったぞぉ?」
そういって神妙そうな顔をしながらもエディセルドの肩に自分の腕をどっかりと乗せて相手の顔を覗き込んでいるアレクの瞳はこんな面白い事見逃せるか!という色が多分に含まれていた。


「ほんとですね〜これは禁断の愛のはじまりでしょうか?」
レセスターも憂いを含んだような表情をしているが目は完全に笑っている。


「俺たちの一番下の弟分は苦しい恋に落ちたんだな…」
クラウゼルも右手を左胸にあてて真剣な表情を取っているがやはり目はからかいの色を含んでいた。


「そ、そんな皆さん!!」
一人真剣にとってオロオロしているのはアーリアだけだった。


「お前たち…オレをからかうのはともかく…アレクが憤死しそうだぞ…?」
一斉に二人に視線を向けると…耳まで真っ赤にして茹蛸のようになって泣きそうなアレクの姿だった。


皆のやりとりをきちんと聞き取れない部分もあったのが愛樹はみんなと一緒にアレクの顔をみて悪いと思いつつ笑ってしまった。



大型犬のようなこの純情な少年を愛樹は結構気に入ってしまった。

 

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