■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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「エディセルドさん…今日は本当にありがとう…」


夜も遅くなり一番小さなレオルドなんてもう半分以上眠ってしまっている状態だった。

その後ようやく宴は終止符を打たれて解散となってしまった。


愛樹は正直に言うとまだ終わって欲しくないなと思うくらい楽しかったのだ。だから終わった後エディセルドが愛樹の自室に戻ってきた時にお礼を真っ先に言いたかったのだ。


エディセルドは一度隣の自室で着替えてきたのだろう。ラフな格好になっていた。


「いいや、私も今日アイキが誕生日だった事を知らなかったからな。お互い様だ」
愛樹が教えていなかっただけなのにエディセルドは愛樹に気を使わせないようにそう言ってくれるのが分かって心に温かいもので満ちていくのが分かった


「オレ…誕生日のお祝い…初めて…」
「え…?」
エディセルドは愛樹の座っているソファの隣に座ってきた。


愛樹はソファの上で体操座りをするような状態でエディセルドを見ずに床の一点だけを見つめて話し続けた。



「オレの両親…小さい時…死んだ…だから記憶あるときから…色んな人の所をくるくる回されてた」
まだ語録が少ないので分かりにくい言葉をエディセルドはしっかり聞き取り一つ一つを理解しようとした。


「その時に出会った親切な人…その人が力は時に危険…でも自身の力はきっと自分に勇気くれ守ってくれる…そういって長く武術教えてくれた…」
エディセルドは愛樹の横顔を見ている。


「ある時お金持ちの叔父さんの所…行った。お金あったから…勉強できた。それはよかったけど…………っ」
愛樹は体操座りしている膝に額を押し付け両腕に力を入れて自分の足を引き寄せるようにして体を出来る限り小さくした。


「辛いなら…話さなくてもいい…」
エディセルドはその愛樹の辛そうな様子に我慢できなくて縮こまってしまっている愛樹の肩に手を置いて、そっと声をかけた。


「大丈夫…エディセルドさん…オレの伴侶。きちんと聴いて欲しい…」
そう言ってため息をつくように顔を上げた。でもエディセルドを見ようとしない。


「その時…叔父さんに…襲われそうになった…面倒見てやっているんだからって…」
「…っ!」
エディセルドの拳が堅く握られた事が愛樹の目の端に映った。


とても辛いことだと思っていたけれど…言葉に出すとどうしてこんなに簡単にしか聞こえないんだろう…愛樹はそう思いながら誰にも知れたくないと思っていた過去を話し続けた。


「武術教えてくれた人…円山(はやま)さん言うのほんとだった。その力でどうにか逃げられた…」
全てを吐き出すようにぽつぽつと続ける。


「その時…逃げられたけど…見られたくない所…オレの身体全部見られて…男でも女でもない…化け物て…」
「…」
「オレの身体…普通違う分かってた。でも辛かった。…もうその後は何もなかった。まわりの人に格好悪いからって…嫌なもの避けるように…だけど…お金だけは出してくれて…大きい学校までいかせてもらえた。そこは感謝してる」


「…」
「オレ…人に触られるの苦手。そのせい。でもエディセルドさん平気。何でかな……」
「アイキに武術を教えてくれた人に感謝してもしきれない…」
ようやく話の終わりが来た。


エディセルドは辛い話を伴侶であるエディセルドだからこそ話をしてくれたのが嬉しかった。


それと同時にその時に自分が側に居ない事は当たり前の事なのに側に居てやれなかったことが悔しくてならなかった。

 

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