■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

・・21・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「アリクすまないがアレクを愛樹の護衛にしたいのだが…」
数日後、エディセルドは自分の屋敷の執務室にアリク、クラウゼルを呼んでいた。集まったのを確認したら話を切り出した。


「そりゃ、いいぜ。あいつはこき使ってやって」
「すまんな…騎士になったばかりで希望もあるだろうに…」
「いや、反対に喜ぶだろうよ………例の件か?」
アリクのその言葉に静かに話を聞いていたクラウゼルがエディセルドの代わりに口を開いた。


「厄介な事にな…」
「か〜っ!あんな奴、永久に帰ってこなくてよかったっつ〜んだっ」
アリクは盛大に顔をしかめて悪態をついた。エディセルドも普段なら嗜めたり、内容によっては苦笑したりするのだが今回は真面目な表情を崩す事無く聞いていた。


「今までならエディの主義があったからほとんど影響はなかったんだがな…」
クラウゼルは疲れたような溜息をついた。


「主義を宣言していないと面倒になっていたからな…だから公言してまわったんだ……とにかく、確実に私よりもまず愛樹が影響を受けるだろう……その為にも側に腕の立つ護衛がいるんだ」
「まぁアレク坊は俺達みんなで鍛えてやったから強いだろ」
クラウゼルはくすくすと笑っているがアレクの強さを認めている。


彼らよりもアレクは少なくとも10歳は年下だ。アレクにとっては物心ついた時にはもう彼らは大人だった。クラウゼルに至ってはアレクより14歳も違うからなおさらだろう。

アレクは3人の兄達の剣術や武術を見て、試して、習って、返り討ちにあいながらも体得していったのだ。

幼い時より彼らに鍛えられたアレクが騎士の試験をクリアできたのは当然の事と言えるかもしれない。



「ん〜単純一途バカなとこあるけどな」
「そこがアレクのいい所だろう?」
兄アリクの酷評に苦笑しながらエディセルドはアレクをかばった。


そもそもこんな態度を昔から弟アレクに対してとっていたが、少しでもアレクに危害を加えた輩がいたら、例えアレク自身が返り討ちにしていたり、気にしていなかったりしても、後で報復に向かい5倍は手酷くやり返していたくらいだ。


つまりブラコンである。


年の離れた兄弟という事もありはたからみたらただ捏ねくりまわしているように見えても物凄く可愛がっているのだ。


幼い頃からアレクもそれが解っているので遠慮なく悪態もついてきている。


その度に小突きまわされていたがアレク以外の人にそんな風に言われたのならアリクは奥歯の4本くらいは頂いているかもしれない。

 

 *