■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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「それでは…この大陸の歴史的な所から簡単に始めてみようか?」
「はい、お願い、します」

レセスターは愛樹が語学を話せないなりにも、かなり聞き取りが出来るようになってきているので簡単にこの国にどうして女性が存在しないのか等を話していくことになった。


今日はレセスターが主体になって愛樹に話をする事になったのだ。

「まず…この大陸を三分の一ほど占める巨大な砂漠の話をしましょう。私達の住む国は西にありアーマライトと言います。その東側にあるのです。そこはかつてセラフィールドと言われた今では失われた国…」
「さばく…」

「砂ばかりになって動物や植物が生きる事ができない状態になっているのです」
アーリアは愛樹が疑問に思った事を口に出すように言っていた。それに対して愛樹に分かり易く解説する役に徹していた。


「かつては大陸の中で一番に大きな国だったんですよ」
アーリアは優しく愛樹に伝えた。それに頷いて愛樹はレセスターに向き直って聞いた。


「どうして…砂漠…なった?」
「史実には当時動乱の時代が続いたせいできちんとした書物として残ってはいないので…真実とは違うかもしれないのですが…『白き悪魔』の仕業であると伝えられています」

「白き…悪魔…」
アーリアがそれを愛樹にそっと解説した。それに納得して顔を上げたのを見計らってまたレセスターはゆっくり話し始めた。


「そうです。その当時強い閃光が走った後にセラフィールドという国は滅亡したのです。その閃光の正体は今となっては解明するすべもありません。

いまだに魔族の仕業で魔によるものである、落雷などの天災、神による制裁、魔法の発達した国だったので魔術の暴走…説はたくさんありますが…どれ一つとしてきちんと立証できていません」

レセスターの言葉をしばらくアーリアが愛樹に解説する間を持って次のことをアーリアは話し出した。


「…動乱の時代のなかセラフィールドでも一番の術師であったデイビット・ジェンキンスによってその後、国を守る為に魔術学校が建設されました。

魔術で行ってもいいもの、行っていけないものそれをきちんと教える為にも作られたと言われています」


「そう…なんだ…。あの…女性、ない、それも、そのせい?」

「…そうです。『白き悪魔』にセラフィールドという国を奪われた後から大陸全土で全く女性が生まれなくなってしまったのです。それがまた更に動乱の時代を酷くし…大陸の人口が半分以下まで落ち込んでしまったそうです」
それを話した後しばしの沈黙が落ちた。


「女性…いない…その…子ども…は?」
愛樹は控えめに聞いた。


はっきり聞いていいものなのかどうか躊躇ったのだ。


これはかなりデリケートな問題であるからだ。特にここにはレセスターというレオルドの親となった人が居るのだから…。


「そこは大事な所になるでしょうね。まずはなさなくてはいけないのは、動乱の時代の中で誰よりも神に愛されたという方がいるのです。彼の名はライジット・センジハー様とおっしゃいます」

「…センジハー大神官の…?」
「そうです。ご先祖様です」
愛樹の躊躇いがちな言葉にアーリアが同意した。

「そのライジット様はこの国に『光の御使い』から預かったとされる種子を大陸全土に植えて回ったのです」

「種子…?なんで…木を植える?」
子どもが生まれる事とその神官が植えた種子との話が繋がらなくて愛樹は聞き返した。

「その種子こそが今私達が生まれるために必要である樹木の姿だったのです。

樹木の名はアイノキ。

その種子を下さった『光の御使い』に種子を作り与えてくださった方が名付けたそうです。

その方のおかげでこの世界は救われました。その方が種子を作らなければこの大陸はそのまま滅びていたでしょう」
その樹木が無ければ愛樹はエディセルドに会う事が出来なかったんだと思った。



だが何よりも気になったのはその樹木の名前だった。

 

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