■ □ 幸せな村の愛の樹■ □ 

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聞き間違えたのかもしれないと思い愛樹は聞き返した。


「樹木の、名前…もう一度、言って?」
「アイノキと言うそうです」
アーリアがその問いに答えてくれてから愛樹は考え込んでしまった。

その考え込んでしまった愛樹の様子を見てアーリアとレセスターは顔を見合わせた。

それでもしばらく沈黙が続いたのでレセスターが何か分からない部分が会ったのかと思いたずねた。

「何か気になる事がありますか?」
「…えっと…あるけど…間違ってたら…」
愛樹は気になる事はあるがそれをたずねるにはもし間違っていたらと思って伝えるのに躊躇ってしまったのだ。

「間違っていても構いませんよ?どんな事でもいいので聞いて下さい」
アーリアが優しく笑って聞いてくれるのに助けられて愛樹は思い切って言った。


「アイノキって…もしかしたら…俺の国の、言葉かも、しれない」


「!!…本当ですか!?」
「!!本当に!?」
アーリアとレセスターは同時に声を上げた。


今までこの大陸のどの国の言葉にも当てはまらなかった名前で『光の御使い』が持って来たので神々の言語という事になっていたのだ。

しかし両者がそんなに身を乗り出してまで驚いたので愛樹は腰が引けてしまっていた。

「えと…間違って、なければ…」
愛樹の腰が引けてしまって声も小さくなってしまったので二人は驚きすぎてしまった事に気がつきアーリアは顔を赤くし、レセスターは落ち着かせるために息を吐いた。


「よろしければ…意味を教えて頂いてもよろしいですか?」
レセスターがそう愛樹の顔をみて尋ねた。

「えと…アイノキって、俺の国ではアイは愛。ノは接続詞での。キは木って意味……………え〜と……それ…で…」
アーリアとレセスターは長年学者達が考え続けてきた言葉の意味が分かった事で静かに興味深く聞いてた。

しかしその後詰まってしまった愛樹の事が気になってレセスターが声をかけた。
「どうかしましたか?」
「えっとね…笑わないで、欲しい…いい?」
「何も笑ったりしませんよ」
アーリアは驚いたように愛樹を見た。

レセスターもその言葉に同意して頷いたので愛樹は安心して続きを話し始めた。

「あのね、俺の国、名前、意味ある。俺の名前…愛樹って、愛の樹って意味。その木と、名前、一緒」

二人はさっきと比ではない位に驚き声も無く愛樹を見つめた。

「……変?」
「…!いいえ。そんな事はありません。そうですか…たしかにアイキさんとアイノキでは一字違いですからね…」
「全く気が付きませんでした…本当に一字違いですね」
レセスターとアーリアはしみじみとその愛樹の話を聞き取ってくれた。

愛樹は笑われたりする事は無いだろうとは思っていたがこんなにすんなり信用してくれた事に安心した。

「うん…でもなんで…俺の国の…言葉?」
「そうですね?何故でしょうか??」
愛樹とアーリアは考え込んでしまった。

それを見てレセスターは微かに笑みを零した。

 

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