@  @愛したい、必要とされたい、可愛がりたい  

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でもフラれた事で心が弱っていたのかもしれない。

この人がとんでもなく悪い奴で殺されても有り金全部盗られてもそれでもいいやって投げやりな気分になっていた。


「うっわ…砂だらけだぁ…」
当然地面にねっころがっていた人は砂がたくさんついていた。

取りあえず水を持ってくるとヘロヘロしながらも自分で飲んでいる。明るい所で改めて見るとかなり整った綺麗な顔立ちをしていた。

「お風呂入ろっか」
そう軽く声をかけると彼は小さく頷いた。

「ん」
そう小さく言うとフラフラしながら立ち上がるので一緒に風呂場まで付いて行った。

「ここで脱いで入ってね。服は用意しておくから…」
「ん」
彼が頷いたのを確認してキッチンに行ってお茶かコーヒーでもとカチャカチャしていたが…ふっと目を上げると湯沸かしのサインがでていない。

という事は彼がお風呂に入ってないのかも…と脱衣所をのぞくと案の定ぼーっと座りこんでいた。


「入らないの?」
「ん」
所詮酔っ払い。ろくに分かっていないかもしれない。


「はいバンザイして?」
「ん」
そう言いながら座り込んだ彼を裸にした。


どうせ僕が入れないといけないだろうからと僕も裸になって一緒にはいった。本当に僕はどうかしている…初めてあった素性の知れない男と一緒にお風呂に入ってお世話をしているんだから…


入ってすぐに湯船にお湯を入れ始めた。僕は彼をバスチェアに座らせた。
「目つぶってね。お湯かけるから」
「ん」
彼は素直に少し顔を前に俯いて目をつぶった。

その様子は従順な大きな犬みたいで…自分よりかなり大きな人なのに…かわいく感じた。


お湯をかけ終わると手の平で泡立てたシャンプーで彼の髪を優しく洗った。染めていない彼の髪の手触りがすごくよくて…洗っている僕が気持ち良かった。泡を流して、リンスもつけて洗い流した。

身体を洗う綿のタオルにボディーソープを付けて泡立てる。それで彼の身体も洗っていく。気持ちいいのか彼は黙ってされるがままだった。

「はい、全部あらったからピカピカだよ。お風呂に入ってて。今度は僕が洗うから」
全ての泡を洗い流した後にそう声をかけると…彼はのそのそと動き始めた。


「ん」
彼はお風呂には入らずにシャワーを手に取って僕の腕を取って引き寄せた。


「洗ってくれるの?」
「ん」
僕の質問に頷くと早速彼は僕にシャワーをかけ始めた。彼の身体を洗う事に夢中になっていて気付かなかったけど…思っていたより身体が冷えてしまったみたいで温かいシャワーが気持ち良かった。


彼は思っていたよりもずっと優しく洗ってくれた。まるで大切で仕方がないもののように…無骨な大きな手をしているからもっと力に任せてガシガシ洗われてしまうかと覚悟していたから…すっごくリラックスできた。

 

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