@  @愛したい、必要とされたい、可愛がりたい  

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「ほら…お風呂に入って」
彼が僕を洗い終わったらすぐに彼をお風呂に入れた。

僕はそのままでるつもりで離れようとしたら…彼の大きな手が僕の手首を掴んだ。

それはちょっと手を振り払ったらすぐに離れてしまいそうなくらい優しかった。

「…一緒に入るの?」
「ん」
また彼は軽く頷いた。何しろ狭いので彼が入った後に彼の膝に乗るようにして僕が入った。

「重くない?」
「ん」
彼はそのまま僕の肩に頭を乗せて両腕を僕の身体に回して力を抜いて、満足そうな溜め息をついた。


「僕の名前は由良(ゆら)っていうんだ…貴方は?」
応えはないかな〜と思っていたけど彼は僕の肩から顔を上げてもそもそと答えてくれた。

「虎太朗(こたろう)」
「こたろう…どんな漢字?」

「虎に太朗」
「虎太朗か…ん〜じゃあこたって読んでもいい?」
「ん」
彼は僕の申し出に怒る様子もなく小さく頷いてくれた。

ちょっと嬉しかった。大きな身体でこたろうってかわいい名前だな〜と感じた。漢字を聞いたら思っていた字とは違ったけれど返って合っているなと感じた。

「茹で上がりそう…上がろうか?」
「ん」
彼は素直に頷いて一緒に上がった。

洗面所にあるタオルで彼にタオルを渡して急いで全身を拭いた。彼はボーと僕のしているのを見ていたので彼の身体も急いで拭いてあげた。

父親ように買っていて…でもサイズが大きすぎて結局着る事のなかったジャージ上下とTシャツ、下着を彼に着せた。

{妙な所で役に立ったな〜…捨てるつもりだったんだけどな…}
僕が出したお茶をゆっくり飲んでいる虎太朗をみてこっそり苦笑をもらした。彼は気付かずに僕がドライヤーで髪を乾かすにまかせている。


「よし。乾いたよ」
そう言いながら僕はブラシで彼の髪をといてあげた。僕と同じシャンプーやリンスを使っているはずなのに…なんだか違うものを使っているように感じた。

僕は彼が座っているソファの隣に座ってドライヤーでガシガシと髪を乾かし始めた。彼はそれを見るとも無しにボーとしていたが…もそもそとソファから動き始めた。


「…どうしたの?」
「…ん」
彼はソファの下の床に座り込んで僕の足にほてっと頭を乗せた。彼はそれ以上動く様子もなかったので僕はそのまま自分の髪を乾かした。

乾かし終わっても彼は動く様子もなく僕のふともものあたりに頭を預けている。そっと頭を撫でてあげる。気持ちよさそうな溜め息が聞こえた。


「…こた…」
呼ぶと彼は顔を上げて僕を見た。

「…おいで…」
手を広げて見せると犬みたいに呼んでしまって怒るかなと思ったが彼はのそのそと動いて僕の腰に腕をまわしてお腹に顔を埋めるようにしてくっついてきた。調度僕の足の間に彼がいるような形だ。


そろそろと頭を撫でる。本当に手触りのいい髪だった。僕は飽きる事なく彼の頭を撫で続けた。

しばらく静かで穏やかな時間だけが過ぎていった。気が付いたらかなり夜遅くなっていました。

「寝ようか…」
そっと虎太朗から離れようとしたら彼はぎゅうっと力入れて僕を抱きしめた。

「こた」
そう声をかけるとようやく離れてくれた。

 

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