@  @愛したい、必要とされたい、可愛がりたい  

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ペットと言っても…どう接していけばいいのかよく分からない。

とりあえず、僕には高校にいかなくちゃいけない時間があるから昼は弁当を作って置いた。

どのみち自分のも作らないといけないのでついでに作った。といっても虎太朗はよく食べるみたいなので僕の弁当の方が虎太朗のついでのようになってしまっている。誰かの為に料理をしてあげるなんてすごく久しぶりでちょっと嬉しかった。

日中虎太朗はずっとこの家にいる訳ではないみたいなのでカギも渡してある。

家のカギを渡したりして悪用されたり…なんて心配は全くなかった。返って虎太朗みたいな大きな番犬がいたら安心だな〜なんてまた失礼な事を考えてしまった。

下の名前しか知らない。住んでいる所も今学生か社会人かも年齢すらも分からない虎太朗との生活はなんとか始まった。




「なんかうきうきしてない?」
いきなり言われてびっくりした。彼は学校友達の槙村 凪(まきむら なぎ)。

小柄な身体でボールみたいにポンポンとよく動き回るクラスのムードメーカーだ。そんなに顔に出ているのだろうか?恥ずかしいな〜…


「そんな事ないよ?」
「い〜や。なんかあったはずだぞ。表情が明るくなったって。なぁ?」
「そうだな〜ついこの間までのどこか沈んで憂いを含んだ表情に比べたら雲泥の違いだな」
こっちは槙村の友人…幼なじみの春日 唯雪(かすが ただゆき)こっちは高身長、成績よし、顔よし、スタイルもよし、運動神経よしなど、なんでもできる非の打ち所のない人だ。


ただ正直なに考えているのか分からない不思議な存在だ。敵に回したくない人間第一位に輝くと思う。というかある事ない事噂されている人なので掴みようがない。

女も男もよりどりみどりとっかえひっかえとか…この県内にある暴走族達を率いる影の裏番とか実はやくざの幹部候補に上がっているとか、実はテロリストの落としダネとか…千里眼を持っていて超能力を使えるとか…そりゃ嘘にしか聞こえない噂がまるで本当の事のようにながれている。

でも春日君にはそんな暗い影なんて見当たらず…もしかしたら彼の性格ならとんでもない噂は自分でながしたんじゃないかとさえ思えてしまう。

春日の横顔をそっと見ると…目が合った…そっと目を反らす。…少なくとも…千里眼は…本当かもしれない。なんでもかんでも見透かされているような気がする。


「ん〜とね…ペットを飼い始めたんだ」
「あ〜それで浮かれていたのか〜」
槙村はすぐそれで僕の言葉を信じてくれた。

ちょっと真実と違うかもしれないが本当の事を言うわけにもいかないので許してもらいたい。槙村は素直に感情を現す。結構頑固な部分もあるけど…そんな素直な部分が好ましいと思う。


「いいな〜」
「やめとけよ、ぎぃ。お前が飼ったらペットがぎぃの面倒を見なくちゃならなくなるぜ。そりゃかわいそうだ」
「あ〜?またお前はすぐそういう事を言う」
そう言って槙村はぷりぷりと怒って余所を向いてしまった。その姿を見て思わず僕は笑ってしまっていた。


「まぁ〜…なんにせよ由良が明るくなって安心したよ」
「ありがとう」
槙村は怒って余所を向いていたのにもう機嫌をなおして笑ってしまった僕をみてにこにこしながらそう言ってくれた。槙村はきっとお人よしだな〜と思う。彼みたいな人に僕は憧れる。


「うわっと!やべっ俺図書室に行くんだ。じゃ〜な!由良!!」
彼はばたばたと用意をして廊下に出て行った。

「……あんまりハマり込みすぎるなよ……痛い目を見たくないならな……」
春日がぼそりと僕にそう呟いた。

「え……な…んで…」
「さて…何故でしょう」
春日は僕の方を見たりしないままで腕を組んで外を見ている。僕は一言も虎太朗に関する言葉を言っていないはずなのに…何故?

「あの…か…」

「こら〜〜〜!!!雪〜〜何やってんだよ!!置いてくぞ〜〜!!!」
僕が疑問を春日に告げようとしたら槙村が戻って来て大声をあげながら春日を呼びに来てしまいタイミングを逃がしてしまった。

「はいは〜い…今行きますよ〜んじゃな由良」
彼は何を考えているのかさっぱり分からない笑顔を見せて槙村の方へ悠然と歩いていってしまった。

ただただ僕はそれを呆然と見送るだけだった。


「…あんなのと幼なじみできる槙村って…大物かもしれないな…」
とりあえず春日に千里眼があるのは間違いないと僕は確信した。

 

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