● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「…ここにずっといられるかもと思っていたけど…いつかここ出なくちゃいけない
んだよね…」
ふと今までの忙しい時間が過ぎていくと葵は今の自分の状況について考えてしまった。


今はジラルドの好意でここに居させてもらっているが…初めて会ったばかりの人間をずっと家に置いておく人はいないだろう。みた所お城とかの騎士みたいに見える。向こうでいう所の警察が自衛隊だろうか



…身寄りがない人は一時的に保護されたとしても…すぐに出て自活しなくちゃいけないはずだ。


葵はちょっと青くなった。ここには自分の故郷なんてないし…働き口が見つからないかもしれない。住む所は?色々考えているうちに葵はすっかり気落ちしてしまった。
「夕飯とかお礼のつもりで作ったけど…」



もしかしてこれってかなりウザい事したのでは…と更にマイナス思考に陥ってしまった。ナンパされた女が初めて訪れた男の部屋を片付けだし…彼女面している…とか想像してしまった。かなりウザっ(汗)



「……どうしよう…明日の朝食べようと思っていたとか…言っとこうかな…」
オロオロと考えたが結局考えはそこで落ち着いた。


「遅いな…」
時刻は11時をまわってしまっている。仕事もあるだろうからきっと食事なんてすでに終わらせているから大丈夫だよな…と自分を葵は納得させた。



「買ってきたの…してようかな…」
時間を見ながら葵は二階へと買ってきたモノを手に上がって行った。少しのつもりだったが気が付くとそれに葵は夢中になってしまっていた。



しばらくすると階下で物音がした。
「帰ってきたのかな…」
慌てて片付けて葵は階下に降りた。やはりそこにはジラルドが帰って来ていた。


「おかえりなさい。ジラルドさん」
思わず嬉しさが滲んでしまったのは許してもらおう。ちょっと寂しかったのだ。



「あ…あぁ…ただいま…まだ寝ていなかったのか?」
そういながらジラルドは葵に近づいた。葵の鼻は微かにお酒の臭いを感じた。


{飲んできていたのかな?}
仕事がえりに一杯と言った所だろうか?


「うん、ジラルドさんはお仕事?」
「いや…今日は友人と飲んできたんだ…」
出迎えてくれた葵に少し戸惑いながらジラルドはコップを取って冷蔵庫の中にある水を飲む為に開けた。


「……これ…」
ジラルドは冷蔵庫の前で固まってしまっていた。それを見て葵はざっと青くなった。



「あ…あの…それはそれはね」
オロオロと葵はさっき自分の翌日の食事用に…というつもりだった事も吹っ飛んでオロオロするばかりだった。するとジラルドから葵が思ってもみなかった言葉が飛び出した。



「……温めなおしてくれるか?食べるから」
そういいながらジラルドはテーブルについた。嬉しさのあまり葵は両親にも滅多に見せなかった笑顔をみせて喜々として用意を始めた。


嬉しそうに夕食を温めなおしている葵の後ろ姿を見ながらジラルドは微かに溜息をついた。

 

 

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