● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

・・10・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うん…まいったな……」
ジラルドは本棚のある所に行ってちょっとした書類を片付けようとしてそこがいつもよりずっと綺麗になっているのに気付いた。


「掃除までしてくれていたのか…」
ジラルドはふぅっと息をついた。返って遅く帰って来た事で気を使わせてしまったのかもしれない。


もうジラルドにとって葵は大事な存在になっている。ジラルドは葵の為にも早く帰ってこよう、そう決心した。

そうこうしている内に二階から葵のジラルドを呼ぶ声が聞こえて来たのでジラルドは二階に上がった。


「ジラルドさんお風呂空いたよ」
「…あ…あぁ」
ジラルドはお風呂上がりの葵に思わず見とれてしまった。


葵は男にしては色が白い。しかも淡黄色で不思議な色あいの肌だった。それが湯に温められて淡く朱に色付いている。

髪もまだ湿っているようだ。しかも大きすぎる自分の衣服を身にまとっているのでジラルドが着るとそんなに胸元の開かない服なのに葵が着るとかなり開いていて…そこから見える上気した肌にもジラルドはどきりとしてしまった。


「これで髪乾かして、先に寝ていろ。んじゃおやすみ」
そう言い残してジラルドは慌てて風呂場へと向かった。


「これ…ドライヤーだったんだ…」
ジラルドの様子には気付かずに葵は新しい生活用品にびっくりした。


掃除の時も見つけたが用途が分からなかったのだ。一見したら…くしのように見えるが肝心の髪をとく部分がなく柄だけがある。その中央にやはりビー玉の赤い小さいのが付いている。


恐る恐る頭に当ててみると…温風が頭にかかってくる。一体どんな作りになっているのかは分からないが確実に髪は乾いていった。


「すごいな〜異世界の文明の利器だ〜」
ちょっと嬉しくなりながらジラルドが取り出した棚にドライヤーらしき道具をしまった。


そして自分に与えられているベッドにもそもそと入った。

今日は市場に行ったりジラルドに料理を食べてもらったりして、異世界の文明の利器にも触れて…興奮して寝られないかもとそわそわしていたが…数分もたたない内に葵は夢の中に引き込まれていった。



「…寝たのか…」
髪をタオルでガシガシと拭きながらジラルドは上半身裸で風呂場から出て来て葵の寝ているベッドに近付いた。


あどけない顔ですーすー寝息をたてて寝ている。思わずジラルドの顔から笑みが零れてしまった。


「随分かわいい顔して寝るんだな…」
葵に振動が伝わらないようにそっとベッドへと座って葵の寝顔を見つめていた。


暫くたってそっと葵の頭に触れて髪を優しくすいた。髪はジラルドが思っていたよりもずっと艶やかで柔らかく触り心地がよかった。


飽きる事なく優しく撫で続ける。ずっと撫でていたいくらいだったが手をそっと離し、葵の横に手をついた。


「おやすみ…ナツキ…」
ジラルドは葵を起こさないようにそっと頬にキスを落としてようやく自分のベッドに入って眠った。


久しぶりにゆっくり眠れそうだった。

 

 

 *