● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「ジラルドさんおはよう」
二階からジラルドが降りてくるとすでに葵はキッチンに立って朝食を作っていた。


「おはようナツキ。早いんだな…」
「うん、昨日は朝ごはん用意できなかったから…今日は用意したんだ」
葵は微かに照れたような表情を見せて昨日から用意していた生地を焼いていた。

オーブンらしきものがあったのでそれを利用してみたのだ。昨日の下ごしらえの時に色々触ってみたりしてなんとなく使えるようになった。だから今日はパンに挑戦してみたのだ。


「うまくできなかったかもしれないんだけど…」
テーブルにはサラダ、魚のソテーに、卵焼きなんてのもあった。こっちにもニワトリに似た生き物がいるみたいで少し卵は大きかったが味見すると今まで食べていた物とかわらないので安心した。


他には色々な野菜を使った野菜スープなども作った。昨日の量で三倍食べると言っていたのでそれぞれを多めに作った。朝という事もあるので…ちょっと控えめにしたが…


「ありがとう。昨日の夕飯もうまかったから楽しみだ」
ジラルドが椅子に座ったらすぐに葵は野菜スープを出した。


「これパンね。野菜スープや卵と一緒に食べてね」
「パンか…これまで手作りか…」
ジラルドはただ葵の作り出す料理の数々に感嘆するばかりだった。今まで食事は町の食堂や酒場などで食べるのが当たり前だったので気にした事もなかった。

だが…今葵が作り出す料理を見たらどうだろうか。今まで当たり前に食べてきた食事が途端に色褪せてあじけないものに感じた。


「それじゃあいただきます」
ジラルドは葵の出す料理を順番に食べていった。葵はそれをすこし緊張の面持ちで見ていた。


「んっ!…うまい」
ジラルドは笑顔を葵に向けた。葵もその言葉を聞いてほのかに笑んだ。

葵はそのまま下を向いて自分も食事を始めてしまったので、口に物を入れたまま固まって、顔を少し紅くしたジラルドの世にも珍しい照れた顔を見る事はかなわなかった。


葵が少食なのを心配していたがこれが自分の量だから…と説明するとジラルドは葵の体格も考えて納得してくれていた。そのままジラルドは葵が作った殆どの料理を全てその胃袋におさめて仕事へ出かけた。




「ん〜?また食材の調達に行こうかな…その前に洗濯してしまおうかな?いい天気だし」
そうと決まった後の葵の行動は早かった。


ジラルドはしなくてもいいと言っていたが葵が自分の分をして、その後ジラルドも自分で洗うとなったら結局、二度手間になってしまう。だからどのみち家にいる自分は家事くらいしかすることがないのだからと強く言った。


するとジラルドも仕事をしているとつい洗濯するのを忘れてしまうので本当は助かると言ってとうとう承諾してくれたのだ。


すぐにジラルドの衣服と葵自身の衣服を洗って外の物干し台に持っていって干していった。

本当は中に乾燥機らしき物もあったのだが折角なら天日に干した方が気持ちいいだろうと、葵は外でほったらかしになっていた物干し台を掃除して干したのだ。


「これで終わり!…んじゃ買い物に行こうかな」
葵は支度をして出かけた。


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