● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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市場ではまず自分の衣服を調達に行った。
色々店を見ていくうちに自分たちの居た世界と庶民の暮らしって変わらないのだなと葵は再認識した。


ブランド物のように見える高級店もあれば安さが売りの店だってある。いろいろ見ていくうちに安さも服の生地も妥当な場所を見つけて一通りの物を買った。


食材の調達にも行ったのだが荷物が多くなり過ぎてしまった。
(もう…自転車とか車とかあったら楽なのにな…せめてカートみたいなのないのかな?)
ぶつぶつ思いながら店を回っていると店員が声をかけてくれた。


「坊主!!それじゃあ買い物もままならないだろう?この台車をかしてやるから乗せなさい。返してくれれば返却はいつでもいいから。一台くらいこんなもんも買っていたら買い物に便利だぞ?」
「そうなんだね。おじさんありがとう。台車ってどこで売っているの?」

「向こうに見える左の通りを3軒目だ」
「本当にありがとう。明日返しに来ますね」


「おう!!坊主お手伝い偉いな。いつでもこい。まけてやるから」
豪快に店員は笑って葵を見送ってくれた。



台車の店も見て回って目星を付けた。


でもジラルドに相談をしてから買おうと決めて、ありがたく借りた台車に荷物を乗せて色々な店を回った。そして葵はまたしばらく逡巡した後に一つの店に入って行った。




「すみません」
片付けをしていた店員が振り向いた。


「あぁ!!あんたか?どうした?また仕入れがあったが…この前、廃棄物をいるって言って突然の事だったから御代をもらったけど…本来これは捨てる予定の物だから今回の御代はいいよ」
「でも…それじゃあ悪いです…」
葵はあわてて首を横に振った


「どのみち廃棄するものなんだから遠慮はいらないよ。むしろ貰ってくれた方が助かるんだ」
店員は豪快に笑って袋に入った物を葵に渡してくれた。


葵は自分に手渡された物を見て目を見開いた。表情の少ない葵にしては大きな表情の変化だった。


「こんなにたくさん…」
「いやぁあんたがまた来るんじゃないかと思うと、これもいい、これもとっておいたらって…こんなになってしまってな」
店員は照れ笑いをしながら頭をかいている。見た感じでは30歳前半位の人のよさそうな人である。


「…なら…これお礼に…」
葵は自分のポケットから作っていた物を取り出し、店員に渡した。


「…!!……これあんたが作ったのかい?」
「はい…えと…返ってご迷惑にならなければいいのですけど」
葵は恐縮してしまったように首を引っ込めてしまっている。


「…う〜む…これいいね」
受け取った物を表にしたり裏にしたり指で触ったりして入念にチェックをしている店員は感心したようにそう言葉をもらした。

葵たんは何のつくったのでせうか?

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