● ○ ●勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ ● ・・13・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そういってもらえると嬉しいです」
ほのかに照れたような表情を見せる葵と今手渡された物を見比べている店員が意を決したように葵の顔を見た。
「俺の名前はオーガン。あんたの名前は?」
「夏木と言います」
突然なんだろうかと訝しげに相手を見上げると彼は嬉しそうな満面の笑みを見せて言った。
「ナツキくん。作品をここに置いてみないかい?そうだな…売上の2割は場所代で貰う事になるが…どうだい?2週間売れないと撤去する事になってしまうけど…これなら必ず売れると思うのだけれどね?」
「ええ!!いや…趣味で作っているものなのでそんな人に売るほどではないですよ」
途端に店員は残念そうな顔になってしまった。彼は葵と正反対で表情の多いタイプの人間らしい。
「まぁ…とりあえずこれは俺が使わせてもらうけど…また廃棄するのが出たらとっておくよ。しかし…あんな廃材でこんな物を作るとはね…初めて見たよ。素晴らしい技術だと思うよ。かしこまる事はないさ。ここには趣味で作ったものを売るコーナーがあるんだ。気が変わったら作品を持っておいで。いつでも場所の提供は喜んでさせてもらうよ」
「それは差し上げた物なのでオーガンさんの思うように使ってください。えと…考えてみます…」
「色よい返事期待しているよ」
そういって見送ってくれるオーガンに会釈をして葵はその店を出て台車を引いてジラルドの家に戻った。
「…どうしよう」
葵は考え込んでしまった。
今まで趣味の範囲から出た事がないので作ったものを売るという発想に至らなかった。
今まであまり作りすぎてしまうと家に置いておくには持て余してしまうのでゆっくり一つの物に時間をかけていた。
でも…売るとなったら好きな物をたくさん作れるのでは…と甘い誘惑にかられた。
「でも必ず売れるわけじゃないし…」
もんもんと悩みながらも葵は主夫らしく掃除や夕食の支度などをどんどんこなしていった。でも頭の中はぐるぐるしてしまっていた。
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