● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「ふぅごちそうさま」
ジラルドは帰ってきたらすぐに夕食を食べた。今日の夕食もジラルドは大いに満足できていた。


「はい、おそまつさまです」
葵はやっぱりジラルドの食べっぷりに圧倒されてしまった。

軽く葵の3〜5倍は食べている。体格が違うので当たり前と言えば当たり前なのだが…。
(騎士って肉体労働っぽいもんね。もっと栄養とか考えて作ったほうがいいかもな…)


ジラルドにお茶を出して葵は使った食器類を手早く片付けていった。その様子を見て感心したのはジラルドだ。


(すごいな…手馴れている。日常的にやっていたんだな。親は…どうしたのかな…帰る所ないって言っていたから…どこかに奉公に出ていたのかもしれないな。聞くのはヤボってもんになんのかね…?)


「終わりっと」
食器を片付けた葵はジラルドの座っているテーブルに近づいた。


(台車の事聞いておかないとな…)
昼間に色々考えた事も結局まとまらなかった。

とりあえず今は買い物に必要な物を買う為には稼いでいるジラルドの承諾が必要だと葵はちょっと緊張していた。



「ちょっと相談しようかと思った事があるんだけど…」
葵はタイミングを見つけてそう切り出した。緊張で少し声が小さく掠れてしまっていた。

「あぁ…なんだ?」
あまりに葵が真剣な表情をしているのでまたここを出て行かなくちゃいけないと思いつめているのではないかとジラルドは身構えてしまった。

「あのね…台車…買ってもいいかな?」
「……へ?」
ジラルドが気の抜けた声を出した事によって葵は慌ててまくし立てるようにして話した。

「買い物する時…あまり荷物が多いと僕…非力だから持てなくて…だめかな?」
段々と語尾が小さくなってしまって最後にはジラルドを上目使いに見上げるような形になってしまった。少なからず葵の事を思っているジラルドはそれに密かにノックアウトされていた。


「…!…買っていいよ。ごめんな。本当なら俺が一緒について行ってやるべきなんだろうけど…」
「あのね、いいんだ。家事は僕の趣味みたいなものだから…ジラルドさん忙しいんだから大丈夫だよ」
葵はちょっとほっとしながらジラルドの優しい言葉に極微かに笑みを見せた。


「金どのくらいかかる?足りないんじゃないか?」
「見に行って来たんだけど今あるお金で充分足りそうなんだ」
「そうか…でも追加分渡しておくよ」
ジラルドはそういってお金を取り出してきた。


「でも…前に貰った分が充分に残っているし…あんまり大金貰うとなくしたりしたら怖いよ?」
微かに戸惑ったように葵は自分の手のひらに乗せられたお金とジラルドの顔見比べた。


「ナツキの事だから自分の服とかそんなに買っていないんだろう?大丈夫。俺はバリバリ働いているし、養う相手もナツキ以外いないんだから、な?今度からよっぽどむちゃな買い物以外、俺に相談しなくてもいいから。そこはナツキを信じている。でも突き放すわけじゃないぞ?悩んで困ってしまうくらいなら相談してくれていいから」
そう言いながらジラルドは葵の手をとってお金ごと手を優しく握った。


「もっと自分の必要な物も買っていいから」
「ジラルドさん…ありがとう。でも大金怖いから半分貰うね」
ほのかに笑んで葵はジラルドに半分だけお金を返した。


「ちゃんと足りなくなったら言うんだぞ?」
あんまり無理に押し付けても葵が困るだろうからとジラルドは二人の妥協点という事にしてお金をなおした。


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