● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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あらかじめお風呂を入れていたので先にジラルドがお風呂に入っている。その間色々なものの片付けをしながらまた葵は思考の海に沈んでしまった。


(…どうしても金銭的な事にはジラルドさんを頼るしかないし…僕に出来るのって家事くらいしかないからな…)


テーブルを拭いたり、キッチンの火周りを確認したりした後、葵はふきんを洗濯液に浸した。そのままそれを見ながら軽く息をついた。


(やっぱり…作品置かせてもらおう。小遣い程度にしかならなくても自分の細々したものくらい揃えられるかもしれないし…)
ふきんを取り出して水洗いをして葵はキッチンのタオルかけに干した。

「ナツキ」
「!」
もんもんと考え込んでいる時に急に現実に引き戻すように声をかけられたので葵はちょっとびっくりしてしまった。


「すまん…驚かせたか?」
「んん…ちょっとぼんやりしていただけ。これ洗濯物ね」
夕方とりこんで畳んでおいた洗濯物をジラルドに渡した。


「あぁ…ありがとう。…?もしかして日に干してくれたのか?」
受け取った洗濯物に微かな日の香りと温かみを感じたジラルドは葵の顔を見つめて聞いた。


「うん今日天気よかったし。シーツも代えたんだけど…いけなかった?」
小首を傾げてジラルドを微かに心配そうに見上げた。


「いいや。久しぶりに天日に干したシーツで寝られるんだな。嬉しいよ」
「よかった」
「しかし…洗濯大変だったんじゃないか?」


「ううん。お日様に干した方が気持ちいいからちっとも気にならなかったよ」
「しかし…物干し台なんてしばらく使ってなかったはずなんだが…」

「外にあったの掃除して使ったんだ」
「そうだったんだな…すま…いや…ありがとうナツキ」
ジラルドは最初、謝罪を口にしようとしたがそれだと葵がしてくれてことに対して失礼な気がしたのだ。だから感謝の言葉に変えた。


「んん…喜んでもらえてよかった。僕もお風呂に入ってくるね」
そう言って葵は支度をしてお風呂に入っていった。


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