● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「ナツキは本当に…」
料理、掃除、洗濯。全てにおいて上手にできている。こんな風に洗濯をして、料理をつくってくれて、お風呂を用意して…『おかえり』と言って、自分を労わってくれる存在が自分の家に居ることの嬉しさをジラルドは今痛烈に感じていた。


今まで恋人と同棲した者や、結婚している人の話を聞いて待っている人がいてくれるから頑張れると言うのを信じる事ができなかった。


そんな存在がいたら自分自身が縛られてしまい、何も出来なくなってしまう。自分のプライベートな空間がなくなってしまい息をつく暇もない。

いつも後ろ髪を惹かれるような思いを感じて居ないといけないのではないか、そんな存在がいたら煩わしく面倒くさいだけじゃないかと粋がっていた。


だが、どうだろう。今の自分は。ジラルドは過去の自分に対して説教をしてやりたいような複雑な心境になった。葵の存在に癒される自分がいる。今まで『家』に帰ってきていたのに…今の自分は『彼』の元に帰ってきているのだ。


「ほんの数日しか一緒にすごしていないのにな…まいったな…」
ジラルドは葵を手放す事は恐らく既に出来ないであろう自分を感じていた。



そのまま穏やかに日々は流れていき、気が付いたらすでに葵がジラルドの家に住むようになって3ヶ月以上経とうとしていた。


今日は段々葵もここの生活になれてきただろうからと今まで止めに止めていた友人たちを招待する事になってしまった。友人たちはジラルドが家に帰る理由である葵を間近で見てみたくて仕方がなかったのだ。


彼らにさらさら葵を見せるつもりのなかったジラルドだったがそうもいかなくなってしまっている。


それでも見せるのは観念しても、葵の料理を食べさせたくなかったのでジラルド食事の後に彼らが自分で飲む酒、つまみ持参を条件に自宅に招待した。



「お邪魔します〜〜」
勢いよく入ってきたのはペルだった。


一番ジラルドとの付き合いが長い。ほとんど生まれた時から一緒だったと言ってもいいくらいだ。所謂幼馴染だ。ジラルドは腐れ縁だといってはばからないが…。


「お邪魔するよ」
「お邪魔〜しま〜す」
「う〜ッス」
三人の友人たちが入ってきた。彼らは騎士になってからの友人たちだ。

はじめに入ってきたのがリオル。次にランス、最後にガリーだ。

リオルが一番年上でジラルド、ペルよりも4歳ほど上の28歳。

ランスが6歳下の18歳。

ガリーが2歳上だ。

ちなみに全員ジラルドにとって部下にあたる。ジラルドは昇級試験を順調クリアしてきていたので将軍、隊長副隊長と続き、現在班長の位置にいる。

次はもう曹長、軍曹、伍長、上等兵、一等兵、二等兵となる。一つの隊に隊長から伍長までは各一人ずつ。それからの下はその隊の隊長によって人数が違う事がある。リオルが曹長。ペルは軍曹。ガリーは伍長。ランスはまだ一等兵である。


「へ〜へ〜、お邪魔されてやるよ」
ジラルドは機嫌が悪いような声を出して四人を迎えた。葵はその様子に戸惑ったがとりあえずお客さんである彼らに挨拶をした。


「え〜と…こんばんは」
「お〜!……」
ガリーは程よく日焼けをしている顔を覆っている薄茶の髭を撫でながらジラルドの後ろにいる葵を見ている。


「ジラルド…犯罪はいかんよ?犯罪者はつかまえねばならん」
リオルが呆れたように片眉を上げながらアイスブルーの瞳をジラルドに向けた。


「誰が犯罪だ!?ったく…だから嫌だったんだ…」
葵はその様子を見て表情には出ていないが微かに困ったようにジラルドの訪問者達の顔を見比べている。


「おい…」
ペルは困ったように皆に声をかけた。


「俺の…4〜5歳下くらいかな?」
ランスは興味深そうに深緑の目を葵に向けている。それを聞いて葵は少し首を傾げた。

(僕っていくつに見られているのかな…)

ペルを軍曹にしたいが為に下士官階級を取り入れたり。
下士官大好きだ〜〜〜!!!

 

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