● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「お前っていくつだっけランス?」
「18になったよ」
ペルがランスに聞いた返事を聞いたら葵は納得した。


(犯罪って13〜4歳くらいに見られていたからか。皆身長高いもんな…)
葵は元の世界でも年齢よりかなり低く見られることが多かったので今更怒ったりする事もなかった。

だがジラルドが誤解されているとなってしまうのなら話しておかなくてはいけないだろうと思って口を開いた。
「僕17歳だからジラルドさんは犯罪者じゃないよ」


「「ほ〜〜う」」
年長組二人はそろって意味深な言葉を漏らした。

「俺より一つ下か〜」
「へ〜そうだったんか〜」
ペルもふむふむと聞いている。その彼らの様子をみて葵は取りあえずジラルドに対する誤解が解けた事に安心した。

一人びっくりしているのはジラルドのみだった。だがそれを年長者二人がにやにやしながら見ているので内心慌てながらも表面上は何もなかったかのように4人をソファーのある所に案内した。そこで各自が持参した大量の酒を開けて宴会が始まった。



(ジラルドさんは何も出さなくてもいいって言っていたけど…)
彼らが酒盛りを始めてしまうと居所のなくなってしまった葵は自然キッチンに入った。ジラルドからは気にせずに何も用意しなくてもいいし二階で先に寝ていてもいいと言われていた。


(一応何か持ってきているみたいだけど…あれだけじゃあ…足りないよね…)
こっそりキッチンからのぞくと一応するめのような魚介類の干物を持ってきていた。


考えた挙句フランスパンみたいな固いパンを薄く切って焼いた物に肉やサラダを簡単に乗せたものとチーズや、ひき肉と野菜を混ぜた物などを薄い生地に包んで揚げた物を用意した。


ジラルドがアレだけ食べるのだから結構用意しても大丈夫と思って多めに用意した。それらのつまみが出来上がった頃にはかなり彼らも飲んでいて少々盛り上がっていた。


「ジラルドさん」
「あ…ナツキ?どうした…??」
後ろからそっと声をかけられたので話をいったんやめてジラルドは振り返った。


「つまみ…それだけじゃ足りないでしょ?よかったらこれも食べて?口に合うといいけど」
そういって先にパンの方を持ってきた。


「「「「おお!!」」」」
四人は感嘆したように葵が用意した物を嬉しそうに見ている。


「悪いな…ナツキ返って気を使わせたか?」
ジラルドは葵が手にもっている料理を見てすまなそうに眉毛を下げた。


「大丈夫だよ。これ凄く簡単にできる物だし。もう一品作っているからそれも持って来るね」
そういって微かに笑みを見せてぱたぱたと葵はキッチンの方に入って行った。


「すごいな…これ…ちゃんと彩りとか考えて作っているんだろうな」
リオルは感心したように葵の料理を見ている。


「はいお待ちどうさま。そっちは手でも食べられるけどこっちは揚げているから取りあえずこのフォーク使ってね」
揚げ物を盛った皿を前に置いた。夜だし揚げ物は胃に来るかな〜と葵は思ったのでパンの方を多めに用意している。


「パンの方は一応おかわり作ってキッチンに置いてあるから足りなかったら食べてね」
「ナツキ…ありがとう。お前ら!心して喰えよ!」
ジラルドは本当の所、彼らに葵の手料理を食べさせるつもりなんか微塵もなかったがこうなった以上は仕方がない。葵の好意なのだから味わって食べさせるだけだ。


「「「「うまい!!」」」」
それぞれが口に入れた途端嬉しそうに感想を言ってくれたので葵はごくごく微かだがはにかんだような笑みを見せた。ジラルドは当然だと言うように葵の料理を口に運んでいる彼らを見ている。


「ちょっと!!味わって食べろよ!?俺のまで食うな!」
ジラルドも慌ててつまみに手を出した。それを見て葵はまたほのかに笑った。


「ジラルドさん、僕は二階にいるから何かあったら呼んでね」
「あぁ、ありがとうナツキ」
その後葵は二階に上がってしまった。


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