● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「は〜〜俺とか無骨な人間だからこんな繊細な物を作れる奴を尊敬するね〜」
ペルは嬉しそうに葵の手の中に在る作品を覗き込んでいる。


葵は柔らかいペルの態度にちょっと緊張を緩めた。
「そうかな?」
そう言って葵は自分の手元を覗き込んだ。


葵の下げた頭を見ながらペルは気まずそうに切り出した。
「あ〜あれから腕は大丈夫だったか?」
「?」


「俺が強く握っちまった…」
「……あぁ…2〜3日したら消えたから大丈夫だよ」
やっと葵は初めて会った時の事をペルが言っているのだという事に気がついた。


「…2〜3日も残ったのか…すまんな」
「気にしないで」
ペルの大柄な身体に似合わず情けない表情を見て、葵は微笑んだ。いつもに比べてもかなり表情の出ている微笑みだった。


最初は理不尽だな〜とは思っていたがここまですまなそうにされたら本当に心から反省しているのだということが分かりなんのわだかまりも葵の中に無くなってしまった。


あまり物事を深く追求して嫌悪したりするような性格でもないのであっさりと納得した。そもそも腕をつかまれた事なんてすっかり忘れ去っていたくらいだ。
「そうか。ありがとう……え〜と…作るところ見せてくれないか?あんまりこんな物を側で見る機会ってないもんだから…」
「いいよ」
そう言って葵は取りあえず今している物以外の布を箱に入れてベッドの下に隠して道具箱だけにして再開した。それをしばらく無言でペルは見ていた。



「なぁ…もしかしてジルはこれ知らないのか?」
さっき葵がベッドの下に材料を隠したりしていた様子を見てペルは少し疑問に思った事をぼそりと言葉に出した。


葵はそっと顔を上げてペルを見た。
「……タイミング逃したんだ…自分で言いたいから…そのペルさんだったよね?ペルさんナイショにしておいてね」


「いいよ〜そうかタイミングは大事だよな〜。実はさ、俺もこんなちまちました可愛い物が好きでさ〜でもこんないいガタイした奴がこんなものを作っている所に張り付いたり買ったりって出来ないだろ?だから今見せてもらって感謝しているくらいだ…ちなみに…これも内緒な?」
ペルは思わず葵の秘密を知ってしまったので葵の負担にならないようにとそんな事を言ってくれているというのが葵にも分かった。


その小声でしゃべる、おどけた様子が可笑しくてまた葵は笑った。


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