● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

・・21・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ねぇ…神子って本物なのかな?」
1番年少であるランスがそう言って首を傾げた。


「そうだろ?あの黒髪黒い瞳が証拠らしいからな」
ガリーが酒をまるで水のように飲みながら答えた。


「そうかぁ…やっぱ高貴な人なんだなぁ…」
ランスはしみじみと年少の少年らしく伝説の人にたいしての憧憬をみせた。しかし一筋縄ではいかない年長達の顔色は優れなかった。


「そうでもないみたいだな」
「え?なんかあるの?」
今の所注目の人間である神子の話である。ランスは瞳を輝かせてリオルの方へと身を乗り出した。


「城の使用人からの話だけどな…大臣との癒着があるらしいぞ?」
噂話はどこであってもついてくる。城の使用人だけあってかなり口は堅かったのだが…最後に少しの不安をぽろりと零したのをリオルは聞き逃さなかったのだ。


「うへぇ…可愛い顔してもしかして権力にへつらうって奴なの?」
ランス少し幻滅したように顔をしかめた。


「王の寵愛も受けているからな」
それにガリーが溜息をつきながら答えた。


「片時も離さないと聞いたな…」
「後宮に王にしては側室がいなかったからな…早くに王妃を娶ったのはいいが…病に倒れられてからそれっきり誰も娶らなかった…」
ジラルドは顔をしかめるようにしながら言葉を繋ぐ。


「今まで後継者がいるから特に文句も出なかったんだよな…」
「返って亡くなった王妃を大事にしていると思われて好感度高かったし…」
微苦笑を含んだような声でリオルが話す。


「まぁ自分が覇権を握りたいが為に側室を…と言っていたのが大臣だったよな?」
「もう自分の娘、親類を送り込めないから今現在の寵愛を一身に受けている神子に目を付けたってか」
ガリーは苦虫でもかみつぶしたような表情をする。


「でもさ神子がそんなの相手にするものなのかな?」
やはり神子という至高の存在に対して憧れを持っているランスはまだその意見を捨て切れないようだった。


「今、それについて話してんだろうが」
ガリーが呆れたような声を出しながらも自分達の可愛い弟分をしょうがないな〜という表情で見た。


「大臣との癒着か…たいした事にならなければいいけど…」
ジラルドはその事のみに重点を置き溜息をついた。


三人も口々に色々な意見を言い合った。


 *