● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「……リオル……ペルの奴にはこれ話してんのか?」
ジラルドは三人の話に割って入るようにして、ここにはいないペルについて聞いた。


「あぁ、俺とガリーで話してあるから今の内容をペルはほとんど知っているよ」
途端にジラルドの眉間にシワがよった。


それを見て盛大に吹き出しなおかつ腹を抱えて笑い出したのはガリーだ。
「だぁっはっはっはっはっ!おっ前分かりやすかったんだな〜」
「今の話にかこつけてペルを二階から引きずり降ろしたかったんだろうが残念だったね」
リオルも笑いに滲んだ目元を隠すこともなくクスクスと笑っている。


それにますます憮然とした表情になったジラルドを見てリオルとガリーはまた大笑いをしている。


「この前の事を謝りたいからって言っていたけど話長いみたいだね…気が合ったのかな?」
年長組の思惑など分かっていないかのようにランスが呟いた言葉にも二人は大ウケした。


今ならきっと何かが転がっても笑えそうな勢いだった。そのランスの言葉に更にジラルドの表情は険しくなっていった。


「お〜い…ジラルド〜今にも人、一人殺しそうな顔になっているぞ〜」
ガリーはまだ笑いの滲んだ声でジラルドをいさめにかかったがそんな声色では火に油を注ぐようなものだった。


「うるせぇっ!ほっとけっ」
ジラルドは今二人に言われた事で確かに自分が苛立っているのを感じた。


(くそっ!俺が嫉妬だと…畜生…まだナツキと付き合いがあるわけでもないのに…)
正直ジラルドは自分の中に今までほとんど存在しなかった感情を持て余していた。




「…?なんだ…お前らなんかあったのか?」
その直後にペルが降りて来てジラルド達の中に流れる微妙な空気を感じ取った。


「絶妙なタイミングだな〜」
ガリーはまだ笑っている。


「上にいてあれだけの笑い声が聞こえたら普通気になるだろ?」
ペルはまだ笑いやまない二人を見て呆れたような顔を隠す様子もない。


「何か面白い事あったの?」
ペルの後ろから付いて来ていた葵は無表情ながら不思議そうに小首を傾げながらジラルドに聞いた。


「面白い…というか……」
ジラルドとしては葵の質問だから答えてやりたいのはやまやまだが…内容が内容な為言葉を濁した。


「オトナな事情だよ」
リオルは答えに全くなっていないような言葉を出したが、ペルは憮然とした表情のジラルドと嬉しそうな二人の様子から葵の事でからかっていたんだろうと察しをつけた。それを聞いてジラルドのこめかみがぴくりと動いた。


(あ〜あ〜…こんなに表情出しているなんて珍しい…そろそろ…かな)
ペルは長年の経験からそれ以上はまずいなと感じた。


「もう、いいだろ?それくらいにしとけよ」
「それもそうだな〜」
ガリーはようやく落ち着いてきたみたいであっさりと納得して、残りの酒をあおった。


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