● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

・・24・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さて…そろそろ帰ろうか…ナツキちゃん、今日はごちそうさま。美味しかったよ」
リオルはそう言って立ち上がった。


ガリーとランスも御礼を言いながら立ち上がった。
「いいえ。喜んでもらえたならよかったです」


「感謝しろよ〜アオイの料理はうまいからな」
ジラルドが偉そうにわざと踏ん反り返るようにして言った。


「お前がいばることじゃないだろぃ」
ガリーがジラルドの腹に軽く拳を入れるような仕種をした。そしてリオル、ランス、ガリー、ジラルドは玄関に向かった。その時アオイは簡単に使った食器類を重ねた。


「ナツキ、今日はありがとう。つまみはうまかったし…いいもの見せてもらって」
ペルがまだ葵の側にいて声をかけた。他の四人は玄関の所でまた話をしていたが後半部分は大きな体を折り曲げて葵の近くにきて小声で話した。


「どういたしまして…名前の事聞けたし、よかったよ」
葵もこっそりと伝える。


「あれ、大事にするからな」
「うん、そうしてくれると嬉しい。また見に来てね」
「いいのか?」
「いいよ〜ペルさんが僕の作品でもいいならね」
「もちろんだ」
こそこそっと二人は話した。


さすがにそんな不審な行動をしている二人の様子に彼らも話しをしていたが気がついた。
「なんだ〜やらし〜な。なんの話してんだよ?」
ガリーが一旦は外に出ていた身体をまた室内に半分乗り出すようにして聞いてきた。

葵とペルは一瞬目を合わせた。

葵は一言。
「内緒」

その言葉にこくこくと小さく頷いているペルの姿はまるで幼い子のようで大きな身体とアンバランスだった。それがツボに入った葵はペルにまたはっきりとわかる笑顔を見せた。


「後で締め上げて聞くとしよう」
リオルは笑いながら物騒な事をさらりと言った。


「ペルさんをあんまりいじめたらダメだよ?」
葵はすぐにまたいつもの無表情に戻ってリオルを見ながら言った。


「大丈夫〜大丈夫〜ペルなら少しいじめたくらいじゃ死にゃしねぇ〜よ」
ガリーは爆笑している。


ジラルドはさっきの葵の発言で機嫌を戻していたが葵の滅多に見る事のできない笑顔がペルに向けられている事にまた機嫌を降下させた。


「おいおいおい。俺は壊れ物注意のか弱い人間なんだ。ナツキまたな」
ペルは苦笑しながらおどけたように話して、葵の頭を少し乱暴だが優しい仕種で撫でてから出て行った。

すると突風が部屋の中にいた葵にもわかるくらいふいてきた。
「だぁ〜今日は風がつよいなぁ…」
ペルは外の様子を見ながら呟いた。


そのあと口々に別れの挨拶をしてペル達はジラルドの家を後にした。


 *