● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「ジラルドさん。お風呂沸いているからお先にどうぞ。僕洗い物を片付けてくるね」
葵はテーブルに簡単にまとめておいた食器をキッチンへと持って入り、洗い始めてしまったのでジラルドはペルとの事を聞くタイミングを逃してしまった。


(ペルの奴にあんな顔見せるくらい気を許したのか…俺の友人に懐いてくれるのは嬉しいが…あれは…)
葵はどちらかというと無表情が基本だが最初の頃よりも格段に笑顔が増えてきている。


それでもほのかに滲む儚い笑みが大半だった。それ故にペルに向けられていたあの笑顔を自分に向けてくれたら…とジラルドは思ってしまったのだ。


(あ〜もう…脳が焼き切れそうだ…嫉妬なんてするもんじゃね〜な…風呂入って頭冷やそう…)


「先に風呂に入らせてもらうな〜」
「は〜い」
そうやり取りをしてジラルドは頭をすっきりさせるべく風呂へと向かった。



ジラルドの後に片付けの終わった葵もお風呂に入ってベッドに入った。葵はなんだかんだとジラルドの友人とはいえ初めて会う人達ばかりだったのでかなり神経を張っていた。

その為ベッドに入るとすぐに泥のようにぐっすりと眠り込んでしまった。反対にジラルドは酒をたくさん飲んだにも関わらず初めてと言っていい程の感情を持て余したままで目が冴えて眠れなくなってしまっていた。


「あ〜情けないな…」
ふうと溜め息を付いてジラルドはのそりとベッドから起き上がった。そして静かに音を立てないように葵のベッドの側に近寄った。


ベッドを覗き込むと普段よりも幾分幼い感じのする寝顔の葵の様子が目に入った。ジラルドは葵の寝た後に顔を見る事があった。

ただ見て就寝の挨拶を聞こえないと分かっていてもかけたり、髪を撫でたり、ごくごくたまにではあるが…頬にキスをしたりしていた。

(10歳くらいの子どもでもあるまいし…)
本当にただ優しく触れるだけで心が不思議と落ち着く事ができていたのだ。幼い子どものやり取りのように。

それは今までジラルドが葵を13〜4歳と思っていた事も関係あるのかもしれない。


「…これで17歳…か…」
苦笑してジラルドはそっとベッドに腰掛けた。優しく葵の頭を髪の毛をすくようにしながら撫でた。


「ぅ……ん〜…」
葵はその優しい仕種がくすぐったかったのかいやいやをするようにして撫でていたジラルドの手の人差し指を片手できゅっと握りこみ胸元に持ってきて身体を丸めるとまた安心したようにスースーと寝息をたてた。

動いた時は起きたのか?と少し焦ったジラルドだったが指先に感じる葵の体温に思わず小さく笑いをもらした。


「そんな可愛い仕種をして…襲われても知らないぞ?」
ごくごく小さな声で囁き無防備にさらされている耳元にそっとジラルドはキスを落とした。

 

さぁ皆さん、ジラルドさんに掛け声を
「へ〜んた〜い☆☆」

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