● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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そうこうしているうちに葵の目が覚めた。
「よかった!!目が覚めたんだね!!」

葵はどうして柳の腕の中にいるのか分からない様子だったが柳の言葉に気絶していたんだ…と納得して小さく頷いた。


「治った?」
いつもの無表情で葵は訪ねた。


二人とも一瞬、虚を突かれたような表情をしたがすぐに柳は泣き笑いのような表情になった。

「うん、うん。治ったよ。本当にありがとう…」
「…私からも礼を言おう…柳の火傷を治してくれて…ありがとう」

柳はともかく葵は知らない。


リィズウェルが礼を言う等この世で今まで柳相手一人しかいなかった事を…。そして誰よりもなによりも柳の火傷の痕を気にしていたのも…


「いいえ。僕も倒れてしまった所を助けていただいたみたいですし。お互い様ですよ」
葵はさらりと答えた。葵の中では誰かを助けてあげたなんてつもりは全くなく自分に出来る事をしただけという思いしかなかった。


「ごめんね。え〜と自己紹介がまだだったね?俺は倉本柳っていうだ。それでこっちが…」
「リィズだ」
またまた葵は知らないがリィズウェルが誰かに自分で自己紹介するなんて皆無だ。

しかもこの名乗った名前も柳以外に殆ど呼ばせた事の無い名前を言ったのだ。

リィズウェルの種族にとって真名の略称を伝えるのは最上位の感謝と信頼をその者に向けた事を意味する。

流石に柳も微かに驚いた顔をしたが葵がしてくれた事を考えると理解できたので納得して笑みをもらした。


「僕は夏木葵といいます」
「葵君か…俺も柳でいいよ」
「……私もリィズでかまわん」
今日のリィズウェルは珍しいことづくめでいつも一緒にいる柳でさえ驚きの連続だった。

「葵とやら…柳と同じ言葉を話すと言う事は柳と同じ国の人間だな?その髪と目は?」
「俺も思った。ここに来てどれくらい?」
二人は葵の容姿について気になった事を聞いた。


「ここじゃなんだから…木の側に座ろうよ」
道のど真ん中を誰も通っていないとはいえ占領していれのはよくないと思って葵は二人に声をかけた。

 

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