● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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手芸店の前で片付けをしていたオーガンに葵は声をかけた。
「オーガンさん。今日の作品です」
「おぉ!!新作か!どれどれ…」
葵はオーガンの元に作品を持って行った。

オーガンは葵作品の大ファンであるらしく新作を持っていく度に目を輝かせて作品を見てくれている。今日は小さな布製鞄を何作か持ってきたのだ。オーガンは葵の手元を見て嬉しそうにしたが手が汚れているようで手に取る事は無かった。
「ん〜いいね〜。これもすぐに売れてしまうだろうね」


オーガンは庭を片付けていたのか二重に手袋をして袋に雑草を詰め込んでまた更に袋に入れていた。そこから転々と赤黒い実が零れていた。それを何気なく葵が拾おうとしたらオーガンによって慌てて止められてしまった。

「待った!待った!これは毒を含んでいるから素手で触ったらダメだよ」
オーガンは下に落ちてしまった実も全て拾い集めて袋に入れて片付けた。その後オーガンは手を念入りに洗って店先に待たせていた葵の元にやってきた。


「ごめんな。いきなりどなったりして…」
「いいえ。気にしないで下さい。知らないで触ってしまう所でした。あれはそんなに毒性が強いのですか?」
葵はあまりにオーガンが念入りに始末していた実の事がふと気になってしまったのだ。


「あれは…タダキの実というものでね。初めは全体的に普通の緑色なんだが実が熟すとオレンジの葉っぱに赤黒い実になるんだ。その実や葉っぱ一個の毒性自体はかなり弱い。でもかなり厄介な代物でね…。汁が肌に触れると多少かぶれたり、かゆみをともなったりがあってね。それだけならいいが…毒が体内に蓄積されて排出されないんだよ」

「蓄積…排出されない…」

「手に汁が触れただけでも体内に吸収されて蓄積してしまう事があるからね。最も致死量に至るには毒性は弱いから結構な量が必要になるが…体の中に毒物が蓄積されたらやはり色々な弊害がでるからね。排出されないというのが一番厄介な特性かもしれないね。昔はなんらかの形で使い道があったみたいだが…今は見つけたら絶対に始末してるんだよ」

「そうなんですね。気をつけます…でもオーガンさん、そんな危険な物がどうしてここに?」

「よく分からんが道に面したうちの畑の端に生えていてね…。普通に焼き払うとそこの土が毒性を含んでしまうから取りあえず袋に入れて焼き払いを魔術師に依頼したんだよ。葵君も気をつけた方がいいよ」

「はい。教えて頂いてよかったです」
葵が頷くのを見てオーガンは葵の作品を受け取りながら封筒を渡した。


「これは前回の作品の売上。今回の作品はまた飾っておくよ」
「はいお願いします」
そう言って声をかけると葵はその場を後にした。

 

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