● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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「荷物で冷やさないといけないものは冷蔵庫に入れておいたから…」
ガリーは家まで葵を連れて行ってくれ、ソファーに葵を座らせた後に荷物の整理までしてくれていた。今ガリーは葵の座っているソファーの前に屈む様にして葵を覗き込んでいた。


「ん〜俺にはよくわからねぇんだが…ちょっと顔色が悪いなぁ…」
「あの大丈夫です。少し休んでいれば良くなると思いますから…」
そう葵は言うが正直無表情なのでガリーにはその真意を測りかねた。ジラルドに報告するべきかと悩んだ。率直にそれを葵に聞いてみることにした。

「ジラルドを呼ぶか?今日は大した用は無いだろうから何とかなると思うんだが…」
「そんな!!あの僕大丈夫ですから…ジラルドさんに迷惑をかけるわけには…」
慌てて葵は身体を起こしてガリーに訴えた。

「…そうか?まぁ…一応リオルに見てもらった方がいいかもしれないなぁ…」
「リオルさん?どうして?」
「あぁ?知らなかったか?あいつは魔術が多少使えるんだよ。ここの魔法具は大抵あいつがつくったものだぞ?調理器具とか、髪乾かすのとか…」
葵は純粋に驚いてしまい普段の表情よりも遥かに分かりやすく目を見開いてぽかんとした表情を見せた。それをみてガリーは葵の無表情から表情が出たのが嬉しかったのか満面の笑みを見せた。


「知らなかったんだな」
「はい…びっくりしました」
「そうか。…ん〜やっぱり…まだ顔色が悪いような気がすんなぁ。ナツキちゃんの意見と俺の意見半分でジラルドの仕事が終わったらリオルに来てもらう事で妥協するってのはどうだ?」

「はい…ご迷惑をお掛けしてすみません」
「いいんだよ。んなこと気にするな。お互い様なんだからよ。ここにいる訳にいかないなぁ。歩けるか?」
「はい…。……っ…」
ソファーから立ち上がろうとしたらやはり葵は身体をぐらつかせてしまい目の前にいたガリーの手を借りざるを得なかった。

「…おいおいおい。無理するなよ。寝室まで連れて行ってやる」
「……何から何まですみません」
その後、葵はガリーの手を借りて二階の自分の寝室までいった。

正直葵はガリーがいなかったら例え這って行ったとしても二階にたどり着く事ができなかったかもしれないと思った。だからガリーには感謝の言葉しかなかった。


「本当にありがとうございます」
「いいから。ちゃんと寝てろよ?動くなよ?家事すんなよ?」
ガリーには葵が無理をしてでもジラルドの為になるならとそういう事をしそうだったので帰るまで口が酸っぱくなるほど繰り返した。

実際葵はすぐに良くなるだろう、そうしたら夕飯の用意をしなくてはと思っていた。ガリーが離れていく気配を感じながら葵はベッドに沈み込むようにして眠りに付いた。

 

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