● ○ 勘違い王国〜どうして誰も気づかないのか〜● ○ 

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それから瞬く間に日にちは過ぎていった。

葵はペルから誘われたものの、特に何かジラルドが言ってくる事はなかった。
だから特に葵もジラルドに対してその事について触れる事はなかった。

実を言うとこれはあらかじめジラルド達の間で決められていた事だったのだ。





「うおぉい…たのむから俺にあたるなよ〜…」
ペルは心底困ったような声を出している。

目の前には負のオーラを隠しもせずに放っているジラルドがいる。

遠目から見たら分からないかもしれない。
表情を変えずに不機嫌を全力で表現しているのだ。

「お前本当に分かりやすくなったなぁ…」
ガリィエルが笑いを通り越して呆れを隠そうともせずにため息を吐いていた。

「仕方が無いでしょう。ナツキ君をひとりだけ部屋に残しておくわけにもいかないし、ジルは仕事があるんだから」
「……ちっ」
リオルから呆れた顔を向けられてジラルドは小さく舌打ちをするとその不機嫌な様子を引っ込めたが昔からの仲間ばかりという事もあってかわずかばかり残ってしまったのはこの際仕方が無いだろう。

「恐らく今度のパーティであいつらが動くぞ」
「そうですね。一番に狙われるのはジル、あなたです」
「……………不本意だがな」
ガリィエルがいつもの陽気さが嘘のように厳しい表情をみせた。

リオルも硬い表情を崩さない。流石のジラルドも先ほどまでの冗談から一切表情をかえていた。

「……俺が…守るからさ…ジラルドは自分の意思を貫けよ」
「……あぁ」
古くから居る大臣、貴族にとって金や女で動かないジラルドの部隊は目の上のたんこぶだった。しかも王の信頼もあつい。

ジラルドは節操がないように見えるがそんな策略にはまって女で身を滅ぼすほど馬鹿ではない。

だからジラルドが大事にしている葵にターゲットが移る可能性があるのだ。

間違いなく連れて行くのは危険であるのだが、目の届かない所に一人だけで置いておくよりも、ペルのパートナーとして側に置いておいた方が遥かに安全なのだ。

ジラルドも軍曹の地位にいるくらいだからそれなりに腕に自信がある。ペル自身も葵のことを気に入っているから怪我などをさせたくないから全力で守るつもりだ。

「………これからが正念場だ」
「そうだな」
「失敗すれば間違いなく首が飛ぶ…」
「そんな事させないさ。万が一そうなっても俺が何とかする」
「…………………間違っても自分の身を犠牲にするとか考えるなよ。…………お前にはナツキがいるんだから……」
「もちろんだ」
一番古くからの付き合いであるペルはジラルドに念をおす。

その日も遅くまで話し込んでいた。



披露パーティが始まる日までもうまもなくだ。

 

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