君を望む ◆  

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入ることが出来ずにオロオロしている内にドアがもう3分の1ほど閉まってしまっている。

すると中にもう入っていた彼がまた中から開けてくれた。
「ほんとトロくせぇな…ほらチビ入れ」
そう言って彼は俺の二の腕を掴んで中に引き入れてくれた。彼が触ってくれたのが嬉しい。

情けないけど、こうでもしないと入れなかった…ここは彼の自宅だろう…いろんな考えが頭の中を巡ってしまい、ほとんどショート寸前だった。


そのまま彼は無言で風呂に入るように促してきた。なので…素直に入って…準備もした。出るとタオルと大きめのパジャマの上だけが合ったのでそれを着た。

僕が出たのを確認すると彼はそのまま無言で僕と入れ違いにお風呂に入って行った。


「…」
…しまった身の置き場がない…ソファに座るのは何となく図々しいような気がするし…立っているのも邪魔っぽい。仕方なくソファ近くの床に座った。
くるりと部屋を見渡してみる。なんとなく寂しい部屋だ。モデルルームみたいに物がない。ドアがあるからもう一つくらい部屋があるんだと思う。

やっぱりここは彼の自宅だろう。殺風景だが彼らしい。彼の匂いがする。ほとっと僕はソファに頭を預けた。そのまま目をつぶって彼の匂いに包まれて僕は幸せだった。ここに連れてきてくれたのはこれで最後にする為なのかもしれない。

彼はぶっきらぼうに見えるけど…意地悪なわけじゃない。優しい所だってある。これは彼の優しさなんだろうな…風呂上りで温まった頭で考えた。


「…何してるんだ…」
「ん…なんでもないよ」
僕は彼の声が聞こえたからすぐに顔を上げた。そこには上半身裸で…僕がきているパジャマのズボンだけを着ている彼の姿があった。

本当に僕と比べるのもおこがましいほど綺麗な均整の取れた体格をしている。男として生まれたのならこうなりたい。僕は骨格からして全く違うから憧れるだけで終わってしまうけど。



「こっちだ」
そういって二の腕をつかまれて部屋に一個だけあったドアを開けて中に一緒に入らされた。そこには彼の体格にあった少し大きめのベッドがあった。そこに僕は座らされた。

これから始まるだろう行為は今まで何度も経験してきているので構える必要もない。ただ彼に全てを任せる事しかできない。セックスの経験なんて彼としかした事がないのだから彼がこうしろと、言ったとおりのことしか出来ない。

それでいいと思っている。彼の望むように出来ているのなら僕は嬉しいから。だから彼の動きをじっと待った。


彼はそのまま僕を押し倒してベッドに横たわらせた。僕はそっと目を瞑った。彼を見続けていると僕は自分自身が何を言い出してしまうのか分からないので行為が始まってしまったら目を瞑ってしまう。

彼も特にそのことに関して言ってくることがないので僕はそれを初めて抱かれた時からいつもしている。


彼の唇が僕の首に落ちてきた。そのまま手は僕の着ているパジャマのボタンを外している。心臓が壊れそうな勢いでドキドキしているのがきっと胸元を触っている彼の手にも振動として伝わってしまっているかもしれないが仕方がない。

僕が彼に抱かれて平静でいられるわけがないんだから…
パジャマを剥ぎ取られてしまったら僕はもう何も着ていない。彼はそのまま僕の全身をまさぐるように触り続けている。

少し強めに触られているが痛いという事はない。彼なりに力加減をしてくれていると思う。初めての時も怖くて、怖くて仕方がなかったが彼は少し強引なくらいで痛い事一つしなかった。

もちろん全く苦痛がなかったわけではないが初めてだったのならそれは仕方がないだろう。

「余裕だな。何考えてんだよ」
「ううん、何も」
「………ふん」
彼は僕の考えてる事が分かってしまったみたいだった。でも結局僕はそれから何も考えられないくらい翻弄されてしまった。そして最後には完全に意識が飛んでしまっていた。


でも…その意識が沈んでしまった後におぼろげにアザのある頬につめたい感触を感じた。

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