◇ 暖かい氷の瞳  

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少しむっとしている所に割って入る若い男の声が聞こえた。
「馬鹿息子だなんてひどいな…父さん」
そこには柳よりも年上である事には間違いはないが若い男が立っていた。


そして柳と目が合うと満面の笑みを浮かべて柳の側までやってきた。
「目が覚めたんだね。俺の名前はデイビット・ジェンキンスだ。嬉しいな本当に人間の召喚がうまく…でっ!!!」


そのデイビットと名乗った青年が最後まで言い終わる前にオーガスタがデイビットの頭を殴って言葉を止めさせた。
「馬鹿者!!勝手にこちらの都合で召喚しておいてなんて言い草だ。そもそもこれは無闇に使っていい物ではない。それをお前は二回も…!!一度目は成功しなかったから良かったものの…いきなり知らん世界に飛ばされる人間の身にもなってみんか!!!!」
オーガスタは柳の前であるにも関わらずこってりと息子を叱り付けている。


柳は今までの会話でなんとなく自分が異世界に召喚されたのはこのデイビットと名乗った青年の仕業である事に気が付いた。


(まてよ?二回って事は…一回目のリィズウェルの所に行けたのってこいつのおかげで…しかもここに飛ばされたのもこいつのせいってか?)
柳は感謝していいのか罵倒した方がいいのか決めかねて複雑な表情をしてしまった。


「いいかげんにおし!!二人とも!!!」
その親子のやりとりに我慢できなくなって一喝したのはリリアナだ。これは効果絶大で二人はぴたりと言い争いをやめてリリアナの方を伺うようにしてみた。


「本当に大変なのはこの子です!!それをあなた達は目の前で訳のわからない事を…!!こっちに全面的な過失があるのだからきちんと説明してあげなさい」
二人はリリアナの言っている事が一番の正論であるので反論する事もできずにその言葉に従って柳に説明を始めた。



柳が召喚されたこの国セラフィールドはそれなりに魔術というものが発達している。


オーガスタとデイビットはこの国で魔術師をしているのだ。リリアナも簡単な魔術を使う事ができるがそれでは魔術師として認められないくらいの能力しかない。

ここでは召喚の魔術は最高峰の難術であり魔術師としての称号を貰ったデイビットはかなり前から召喚についての勉強、研究をしてきていたらしい。


それが最近ほとんど完成したので使ってみたくなって使用してしまったのだ。本当の意味で使うのは遠くにいる人間の転移や魔術で手をかしてもらうために精霊などを呼ぶ時などだ。


でも全く違う次元からの人間の召喚に興味を持ちデイビットは研究しつづけていたのだ。もちろん同じ世界での召喚に比べればかなりの高度な魔術となる。

それを成功させてこそ真の魔術師といつしか思うようになっていたのだ。

 

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