◇ 暖かい氷の瞳  

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彼らが出て行った事を確認したら柳は大きな溜め息をついた。
「…実験台だったって事か…」


凍傷を起こしていたらしい掌は治療がほどこしてあった。その包帯の巻いてある腕を目の上で交差させてしばらく柳は黙り込んでいた。するとふつふつと身体の奥の方から怒りが沸いてくるのを感じた。


柳は幼い頃より未熟児で病気がちだった事もあり、病院通いが多かった。柳は検診や診察というより実験台として見られているのではないかと感じる事があった。


この赤い目と白髪のせいで好奇の目で見られているだけと言われればそれまでだが…。だがあまり気持ちのいいものではなかった。


今の時代、髪の色をウィッグで隠したり染めたりなどすぐに出来る。

目だってコンタクトを入れたりサングラスをしたりする事ですぐに隠せる。

肌は一般的な日本人としてはかなり淡い色になってしまうがそれでも髪と目を隠してしまえば色の白い人だなぁ位の認識で終わってしまうはずだ。


しかし柳は…自分のせいでもないのにこそこそと姿を半端に隠したくないと思っている為髪も目も本来の姿のままで過ごしている。それに半端に隠したとしても人と親しくなっていくにつれてそれを明かすタイミングや…もし親しく付き合っていた人に拒絶されたりしたらたまったものではない。


柳の姿を分かった上で付き合ってくれる人を見分けたいのかもしれない。
「どうせなら一回で諦めてくれればよかったのに…なんで二回も召喚するんだよ…」
正直、柳にとって自分の世界に対する執着は全くない。


あるのはリィズウェルに会いたいという事ばかりだ。柳自身でも不思議でしかたがない。ほんの二時間前後側にいただけなのに…誰よりも彼を信頼している自分がいる事を…。


「その場所に飛ばして貰えたらいいのにな…」
とりあえず自分の怒りはかなりあるがそれよりもリィズウェルの元に戻る事が柳にとって最優先事項だった。


「……もうひと眠り…してお…こ…」
柳の意志ではないとはいえ異世界に飛ばされたのはかなりの体力を消耗したらしく、眠気が襲ってきた。柳はそれにあがらう事なく身を任せた。




そして夕方から夜になる頃にようやく柳は目を覚ました。初めて目が覚めた時はまだ朝だったのだ。
「うぁ…よその家でよく寝ちゃったよ…」
ぼや〜とする頭でもにゃもにゃと考え込んでいたら微かにノックの音が聞こえてリリアナが部屋に入って来た。


「よかった…目が覚めたのね。あなた色が白いから心配していたのよ」
そう言ってリリアナは額に手を当てたりして様子を見た後に柳を夕食に誘った。


夕食自体は特別なものではなく庶民的な料理ばかりだった。


異世界という事もありとんでもない食材が出たらどうしようかと思ったがそんなのは杞憂に終わった。

 

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