◇ ◇ ◆暖かい氷の瞳◆ ◇ ◇ ・・9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…あの…僕がここに来るまでに一度自分の世界とは違う洞窟みたいな場所に出たのですが…」
食事が終わった後に柳は気になっていた事をオーガスタとデイビットの二人に訪ねた。
それに二人は驚いたようだ。またオーガスタの機嫌が急降下していくのが柳にもはっきりと分かった。
「……こっのバカ息子が!!!」
がすっとかなり痛そうな音を立ててオーガスタの怒りの拳がデイビットの頭に落ちた。
「いってぇぇ!!!」
それに当然デイビットはかなり痛がった。よく見ると目元には涙が滲んでいる。その威力が分かるというものだ。
「本当に申し訳ない。こんな馬鹿息子に育てた覚えはないのだが…」
オーガスタは苦悩する表情を見せた。柳にとってはオーガスタの子育て云々より質問にきちんと答えてほしいばかりだった。
「馬鹿息子ではあるが…返って二回召喚を行ったのはよかったのかもしれない。最初に行った場所には人や動物の気配はあったかい?」
「いいえ」
柳は即答した。
もちろん動物の気配なんて感じなかったのは本当であるがそれよりももっとすごい存在がいたのは間違いない。
ただこの世の者とは思えないような大蛇がいた何て言ったら…この世界なら受け入れてもらえるかもしれないが…確実に変な人のレッテルを貼られてしまう。
さらにそこに戻りたいなんて言ったら気が触れてしまったと思われかねない。だから柳はリィズウェルの事は一切伏せる事にしたのだ。
「ただ明かりが見えましたので外に出る事ができていれば…もしかしたら…ですが」
本当の事なのでそれは伝えても大丈夫だと思って伝えた。
「詳しくその場所をワシが見たわけではないので断言はできないが…先程君に伝えておいた最悪の状態になる所だったのかもしれない」
「…最悪の状態?」
「未開の場所…人の手がなかなか届かない山奥。洞窟ならどこか海の近くや島だったかもしれない。それが無人島だったのなら君の命がなかったかもしれないんだよ」
「…」
流石に命がなかったかもしれないと言われれば柳も内心そんなに悪い状態にいたかもしれなかったのかと驚いた。
もともとリィズウェルの元に行った時自分は死んでしまったかもしれないと思ったくらいなのでそういう事態にもなり得たのかという位の認識だった。
全てここで言われている内容がドラマや映画、小説の出来事みたいで理解の範疇を超えてしまっているのかもしれない。
それはそうだ。普通の人間がこんな体験をする事なんてまずあり得ないのだから。
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