◇ 暖かい氷の瞳  

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全ての食事の用意があらかた終わる頃に二人が入って来た。
「おはよう」
「はぁ〜あ…はよ〜…」
オーガスタとデイビットが起きてきたのだ。


「んもぅっ!ヤナギさんは早起きして食事の用意を手伝ってくれたというのに…顔を洗ってしっかり目を覚ましてらっしゃい!」
リリアナはまだ寝ぼけ眼でいる我が子に喝を入れた。それに従って渋々デイビットは顔を洗いに行った。


「そうかい…君は早起きしてリリアナを手伝ってくれたのかね。ありがとう」
父親らしいそぶりで柳を褒めてくれるオーガスタに嬉しい反面いたたまれなさのようなものを柳は感じた。


「い…いえ…。お世話になっているのですし…それに僕はたいした事はできていませんから…」
対応が少しオロオロしたようになってしまったがジェンキンス夫妻にとって、それはかなり好意的に映ったようで二人ともにこにことして柳を見ている。


柳はまるで本当は悪戯をしていたのにいい事をしていたように大人には見えて褒められてしまい、ついつい自分で悪事を暴露してしまう子どものような気分になってしまった。
(う〜わ〜…ここまで手放しに褒められた事ないからどうしたらいいのかわかんないよ〜…)
あたふたとしているうちにデイビットが戻って来たので柳は内心かなりほっとした。皆そろったので朝食をとった。

「サラダの味付けがよかったね」
デイビットが食べ終わった後に朝食の感想を言った。


「そうだな。うまかったな…リリアナ味付けを変えたのかい?」
オーガスタもデイビットと同じくサラダの味付けが気になったようだった。


「うふふ。サラダはヤナギさんが作ってくれたのよ。本当に美味しかったわ。教えてもらわないといけないわ」
「え…あ…たいしたものを作ったわけではないですし…」
またまた慌ててしまったのは柳だ。


リリアナに好き嫌いは特にないから好きに味付けしてもいいと言われたのでマヨラーな所のある柳は手づくりのマヨネーズを作ったのだ。


既製品もいいが、新鮮さや安さも味を好み通りにする事で言えば手づくりの方がいい時もあるので柳はたまに手づくりでマヨネーズを作っていた。たまたま材料があった為、作ったに過ぎないのだ。


「あら秘伝って事ね」
「ワシはまた食べたいね。ヤナギ君また作っておくれ」
二人ににこにこと言われてしまっては柳に拒否するだけの理由もない。


「はい。僕でよければ…」
はにかむようにして柳は応えた。


 

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