◇ 暖かい氷の瞳  

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ぼんやりと太陽を見ていたら後ろから服の裾を軽く引っ張られる感じがしたので振り向いた。

「お兄ちゃんは新しく来た人でしょ?」
そこにはハニーブロンドに碧眼という典型的な外国人の子どもが立っていた。

(うわ〜〜っ!かっわいい子だな〜…)
内心あまりに愛らしい子どもの出現に柳はちょっと変態っぽい感想を持ってしまった。

「お兄ちゃん?」
「あ…あぁ…そうだよ」
沈黙を不思議に思った子どもに再度問い掛けられて柳は自分を取り戻した。そして柳の返答を聞いた子どもは嬉しそうに顔を綻ばせた。

「あのね。あのね」
子どもは嬉しくて言葉にならないようで何時も同じ言葉を繰替えした。

「うん。うん。慌てなくてもいいよ」
その言葉にまた子どもはにぱっと音がしそうなくらいいい笑顔を見せた。

「あのね。あのね。お兄ちゃんってうさぎさんみたいだね!」
まるで子どもは世紀の大発見をしたかのように嬉しそうに報告してきた。柳はそんな事を言われるなんて思っていなかったので驚いてしまった。

今まで面と向かってこの髪や目の事を言ってくる人がいなかったのもあるし、ちらちらと見られたり好奇の目で見られたりする事が多くこんなに嬉しそうに真っ直ぐに感想を言われた事がないので戸惑ってしまった。


「そう…かな…うさぎさんみたい?」
「うん!」
「そうか…うん。ありがとう」
「あのね。あのね。かみのけさわってもいい?」
「いいよ〜」
子どもが触りやすいように背を低くしてあげだ。満面の笑みを見せながら子どもは慎重な手つきで柳の髪の毛に触れた。

「きゃ〜!ふあふあだ〜」
最初は片手で恐る恐る触る手つきだったのだが、段々髪の毛をくしゃくしゃにしてしまう勢いに変わった。その時のこどもの目は宝ものを見つけたかのように輝いていたのでなにも言わずに子どものやりたいようにさせてあげた。


「お兄ちゃんの名前は柳って言うんだけど…僕の名前は?」
「ヤナギっていうの?あのね。あのね、ライっていうの。ライジットよ」
『あのね』はライジットの口癖みたいである。彼は嬉しそうに名前を教えてくれた。


「そうか。ライ君って言うんだね。よろしくね」
そういって笑って見せるとライジットも零れ落ちそうな笑みを見せてくれた。
「うん!」
それを見ると柳も嬉しくなり更に笑みを深くした。リィズウェルと別れてからいつも心に引っ掛かりがあった為ここまで笑った事はなかったように思う。


「あのね、もうお家に帰る?」
「そうだね。そろそろ帰らなくちゃいけないね」
「あのね。あのね。手を繋いでもいい?」
もじもじと手を握りしめながら聞いてくるライジットは文句なくかわいかった。


(うわっ…悩殺されそぅ…)
一瞬くらりとなりながらも期待に目を輝かせるかわいいライジットを目の前に断れるはずもなく柳は頷いた。

「いいよ。おいで」
「やったぁ!」
喜々としてライジットは小さなその手の平を柳の手とつないだ。恐らく4〜6歳くらいだろう。

白いフード付きのローブのような服を着ている。腰の所で白い帯を結んである。

よほど嬉しいようで柳にはこれが正しい音楽になっているのかは分からないがライジットは上機嫌にうたを歌った。

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