◇ 暖かい氷の瞳  

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そうこうしているうちにすぐに街の入口に着いた。街に入ればライジットの親も分かるだろうと思い浮足立っているライジットに引っ張られるままに道を歩いていった。

「ライジット!」
男の人の声が聞こえたのでその方向を見るとライジットと似たりよったりの格好をした人が現れた。ただその服の色はライジットと違い濃紺であったが…。

「お父さん!!」
ライジットは嬉しそうにその男性を父と呼んだが全く柳の手を離す様子はなかった。

「あなたはもしかして…ジェンキンスさん所に新しく住む事になった方ですか?」
「はい、そうです」
父親は近くまで来ると柳が誰か分かったのか幾分落ち着きを取り戻したようだ。

「あのね。溜池で会ったんだよ」
「そうですか…それは大変お世話になりました。私はカザイック・センジハーと申します。この子は私の息子です」

「いいえ。たいした事はしていませんので…僕は柳・倉本と言います」
「クラモト…さんですね。本当にありがとうございました。ライ」
「は〜いありがとうございました!」
ライジットも名残惜しそうではあったがきちんと柳に挨拶をして父親と手を繋いだ。

カザイックもライジットと同じくハニーブロンドでブルーグレーの瞳をしていた。顔立ちを見れば間違いようもなくライジットはカザイックの子どもに違いないだろう、そう思えるくらいそっくりだった。

「いいえ、こちらこそ楽しかったです」
柳は嘘偽りの無い本心を父子に言った。すると女の人の声がまた聞こえてきた。

「あなた、ライ?おかえりなさい」
「お母さんただいま〜」
柳がそちらに目を向けると薄いブロンドの髪に碧眼の女性が立っていた。ライジットはその女性に向かって走っていった。こちらの女性はライジットとカザイックと同じ形の濃いグレーの服を着ていた。


「あなた?そちらの方はもしかして…ジェンキンスさんの所の方かしら?」
「あぁ、ライがお世話になったらしい。ヤナギ・クラモトさんとおっしゃるそうだ」
「はじめまして」
「こちらこそ、はじめまして。私はパティといいます。ライがお世話になったようでありがとうございます」
そういって彼女は母親らしい笑みを見せた。


父親よりも母親の方が遠い存在だった柳にとってここにいるパティにしろリリアナにしろ母親と言うものはこんなものだったんだと言うのを初めて教えてもらったような気がする。

柳は我が子を抱きしめるパティの姿と、それを見守るカザイックの姿を眩しい思いで見ていた。


「お兄ちゃんまた遊ぼうね」
「あぁ、…ライ一緒に遊ぼうね」
少しの間呆けていた柳だったがライジットの明るい声に促されるように微笑み返して次に会う約束をした。


(あぁ…もう本当に可愛い…やばいな〜僕変態さんの気持ちが分かる所が怖い〜〜)
内心そんな事をとほほと思いながらセンジハー一家と別れを告げた。

 

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