◇ 暖かい氷の瞳  

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「そういやさ…勝手に弟とか思っていたんだけどさ…正確には柳、今何歳なんだ?」
「あぁ…21歳ですよ」
「えぇ!?」
デイビットは驚きの声を上げた。

柳はそれに面食らってしまった。何かおかしな事を言ってしまっただろうか?と心配になって反芻してみたが自分が言った言葉の中に不審な点は無かった。


「何か変でしょうか?」
「いや…そうかもっと年離れているかと思っていたんだ。俺は23歳。やっぱり俺の方が兄みたいだけどね」
そういってデイビットは悪戯っぽく笑った。


「ヤナギさん成人してらしたのね」
「まぁ妙に落ち着いているからそんなに子どもではないと思ってはいたがな〜」
ジェンキンス夫妻も少し驚いたようだが今まで接してきた柳の様子になんとなく気がつく所があったようだ。


それからも食後のとりとめない話をした。こちらでは元の世界にあったテレビやパソコンゲームなどの娯楽がない変わりに家族で話をするという事が出来ている。


もともと娯楽にも興味が無い柳にとって暇な時間はあまりにゆっくりと流れ息苦しいものでしかなかった。


しかしここでは暇な時間なんて出来る事もなく過ごせていた。出来ればこんな穏やかな時間をリィズウェルと過ごせる事ができたらいいのにとジェンキンス一家には申し訳なく感じるがそう思わずには居られない柳だった。




それからまもなく豊穣を祈る祭りがあの広場で盛大に行われた。

広場の真ん中にあった少し色が違っていた部分はどうやらキャンプファイヤーのように丸太を組んで火を焚く為に出来たもののようだった。

そしてセンジハー一家は神殿の人間だったようだ。元の世界では神に仕える人間達は結婚してはならない、子どもをつくってはいけないと言う事になっている所があったがこちらの世界ではどうやら全く違うようだ。

ある意味一つの職業としてあるみたいで特に神に仕えるためにこれをしてはならないと言うのは一般的な人間にも通じるものしかないようだ。

例えば他人の物を盗んではならないとか人を傷つけてはいけないなど…。


センジハー一家達を交えた神殿の人間を中心に祭りは執り行われていた。

濃紺の服は男性、濃いグレーが女性で、白いのはその子ども達が着ているようだ。

もちろん着ていない子どももいたのでそれも子どもの意思に任せるようだった。


柳は豊穣の祭りに参加した以上はどこかで畑仕事位しなくてはなと思っていた。内心、畑仕事なんてした事もないのに出来るのだろうかという心配はあったがここでの生活に慣れていく以上は覚えなくてはいけない覚悟を決めていた。

覚悟が決まれば祭りを楽しむ事も容易で、皆に混じって思いっきり楽しんだ。小さい頃からあまり祭りに縁の無かった柳は初めてといってもいい祭りを物凄く喜んで楽しむ事ができた。


それはやはりこの街の人間のおかげだろうなと思って皆に感謝した夜だった。

 

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