◇ 暖かい氷の瞳  

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「育ちの悪い奴…ほらこんな奴をひっこ抜いていってくれ。あと雑草もな」
「作物も抜いちゃっていいのですか?」

「あぁ。育ちの悪い物まで一緒に置いているとそっちに栄養を取られるし太陽の光もきちんとまわらないから間引きは必要なんだよ」
デイビットが教えてくれた通り柳は作物の中で育ちの悪い物を選んで抜いていった。

「あぁ!それとその作物一応食えるものは食うから!雑草とわけとけよ!」
離れた所からデイビットが大きな声で柳に声をかけてきた。

「は〜い」
柳は暑い夏の日差しの中黙々とその作業を進めていった。



畑は広いので随分慣れてきたとはいえこの暑さの中では大変な作業だった。
(草ひっこぬくだけなのにこの暑さじゃあ大変だな…)
そう思いながらも育っていく植物が可愛くて仕方がない柳は頑張って作業に没頭した。


「みんな〜一度お茶でも飲みなさい〜休憩よ〜」
リリアナが水分補給の為に飲み物を持って皆を呼んだ。柳もデイビット、オーガスタも待ちかねたかのように作業する手を止めてリリアナの元に向かった。



「はいどうぞ。冷やしておいたからきっとおいしいはずよ」
リリアナは簡単な魔法しか使えないが物を温めたり冷やしたりなどの事は、できるのでその能力を使ってそのお茶を冷やしたのであろう事は柳にも分かった。


氷が浮いており、見るからに冷たくておいしそうなお茶を受け取って木陰に入った。


それでも夏の日差しはまだまだ暑く遮る事はできなかった。でも日向にいるよりもずっと頭のてっぺんのじりじり感が無いだけいいかもしれない。


「ぷはぁ!おいしいです。ありがとうござまいす」
柳はお茶を飲んで身体の底からすっきりした事を素直にリリアナに伝えた。


「たくさん働いて汗かいているものね。もっと飲んでおいた方がわ」
そういってリリアナは木でできている大きな水筒からお茶をまた柳のコップに入れてくれた。


「ありがとうございます」
柳はそれをありがたく受け取った。デイビット達もおかわりして飲んでいる。やはりこの日差しは農作業になれている彼らでも大変な事なのだろうなと柳は思った。


柳は皮膚の色素が薄いためあまり太陽に当たりすぎるのは身体に良くないので彼らが帽子半袖半ズボンでいる中、長袖長ズボン、ツバの広い帽子首タオルで過ごしている。


それだけでかなり違う物だ。ただその分暑い。


こんな木陰に入ると袖をまくって首タオルを外す。それだけで生き返るようだった。


しばらく家族の団欒のような休憩を楽しんだ。

 

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