◇ ◇ ◆暖かい氷の瞳◆ ◇ ◇ ・・29・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
幼い声が過激な人間と柳の間に割り込んできた。眩しいほどの実りの色。ハニーブロンドの髪を持つライジットだった。
「お兄ちゃんが悪いなんてそんなはずないもん!!!」
幼い子どもはすでに滂沱の涙を流しながら果敢に自分よりもずっと大きな普通の状態ではない大人に向かって行った。
それが微かに視界に入った柳はその眩しいほどの輝きに焦点がまだ合わないながらも目を向けた。
「……ら…ぃ……」
「こんなに綺麗なお兄ちゃんがそんな怖いはず無いもん!!!」
ライジットは小さな身体を精一杯広げて柳を庇った。到底庇いきれてはいなかったがその気持ちが柳には泣きそうになるほど嬉しかった。
(……ライ……)
柳は少しそれによって正気を取り戻した。だが狂乱に陥っている人間がそんな事ぐらいで収まりようが無かった。
「どけ!!」
「子どもはひっこんでいろ!!」
もう何が正しくて何がいけないのかも分からなくなっている状態の彼らは勢いよく小さな身体のライジットを払いのけてしまった。
軽い身体であるライジットの事だそのまま地面にでも転がるだけなら擦り傷程度ですんだだろうが…立っていた位置が悪かった。
そのままでは未だ轟々と燃え続けている青白い炎の固まりに突っ込んでいく以外無かった。
「ライ!!!!!!!!!!!」
柳は全身でライジットを庇い勢いに任せて火の無い方へ思いっきり弾いた。だが…
「ぐあ゛あああぁぁぁあ゛あああぁあああああ!!!!!」
そのまま柳の身体は轟々と燃え続ける火の中に右半身を突っ込んでしまった。
「「ヤナギぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!!!!!」」
その場にいたジェンキンス父子、センジハー夫妻は魔術を使って一瞬で轟々と萌えつづけていた炎を消し去り急いで柳の元に駆けつけようとした。
炎に入ってすぐ消し去ったが柳は虫の息で右半身を赤黒く爛れさせていた。
柳が死に至る可能性のある大火傷を負ったのは遠めに見ただけでも明らかだった。真っ先に処置をする為に彼らは走った。しかし彼らがその場にたどり着く事は出来なかった。
一瞬であたり一面を覆い尽くすような閃光が走ったのだ。その光はあまりにも強く魔術を使えないものはしばらく物が見えなくなってしまうくらいの閃光だった。
「柳に触れるな!!!!」
頭上を見上げるとそこには見た事の無い蒼く輝く銀髪に恐ろしいほど美しい緋色と琥珀の混合した瞳を持つ美丈夫が空に浮かんでいた。
そう、リィズウェルだ。
呆気に取られている人々を全く無視してリィズウェルは柳の側に降り立った。
あまりの柳の惨状にリィズウェルの瞳は一瞬にして冷酷に輝くアイスブルーへと変化した。
「貴様ら…」
闇の底から鳴り響くような恐ろしい声を発したかと思うとリィズウェルは柳を抱き寄せた。
「う゛あぁ…」
柳は火傷を負った影響でほとんど意識は無い状態に近いがあまりの痛みに失神する事すら出来ない状況にあった。
止め処なく柳の赤い瞳からは涙が溢れている。リィズウェルはその様子を見て歯軋りをすると一気に力を発動した。
どおぉぉぉぉぉぉぉぉおん!!!
地響きがあたり一面に轟いた。その場にいた人間は皆立っている事ができなくなって一斉に地面に倒れふした。
|