◇ 暖かい氷の瞳  

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「もう…見つけられないかと思ったぞ…」
すぐに柳の後を追おうと思ったがリィズウェルは氷漬けにされていた直後という事も合って一瞬の遅れをとってしまった。


それにより、柳を巻き込んでいった魔術を追跡する事が出来なくなってしまったのだ。あらゆる手段を使い世界を追跡して周り、時空さえも越えて柳の…ほんの数時間だけ一緒にいただけの者の気配をずっと柳と別れた瞬間から探し続けたのだ。


時折柳がリィズウェルに呼びかける声が聞こえたがそれを追うには場所をしっかり特定さえ出来ていなかったので霞みのように消えてしまうそれを頼りにどんどん範囲を狭めていったのだ。


恐らくその微かな気配でさえ真名を伝えていなかったら感知する事は出来なかっただろう。儚い気配のみでなんとか探し続けたが…その気配さえも感知するのは稀であったので捜索は困難をきわめたのだ。



だが柳が儀式の最中に強くリィズウェルの事を呼んだからあの国にリィズウェルが来る事が出来たのだ。


もちろん国に近付くと共に柳がリィズウェルに会いたいが為に祈っているわけではない事に気がついたがそれよりも柳が自身の事を思ってくれる方がより重要だったのだ。


「私を強く呼んだのは…あの人間達の為だというのが少々気にくわないがな…」
その言葉を言った途端にリィズウェルの瞳は一瞬にしてアイスブルーに変わっていた。


柳にリィズウェルの力を持ってしても回復することの出来ないレベルの火傷を負わせたというのが許せないのだ。だが何よりもそんな火傷を負わせる前に見つけ出す事が出来なかった事自体がリィズウェルにとってなによりも大きな心の傷となってしまっている。


どんなに偉大な力を持っていたとしてもこの世で唯一と言ってもいい伴侶にこんな怪我を負わせるようでは自身の力の何を信じたらいいのかとリィズウェルの瞳は暗く燃えた。


リィズウェルの力を持ってして柳を回復させたにもかかわらず火傷の痕は酷い物だった。


もちろんこれから柳の自己再生力によって多少は傷痕が薄くなる可能性はあるが消える事はほとんど不可能に近かった。ごくごく稀に特殊能力として完全治癒させることが出来る者もいるが、あらゆる種族の中で回復魔法に秀でている聖獣でもこれ以上いくら力を込めても回復はしない。


「不甲斐ないものだ…」
そっとリィズウェルは柳を抱きしめるようにして柳の髪をそっとすいた。

 

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