◇ 暖かい氷の瞳  

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「……柳…私はこの華を…身も心もつなげて…満開にしたい…そうすれば柳は私の永久の伴侶となり私とともに生き続ける事ができる……………」
「リィ…ズ」
そうこのアザを満開にするためには身も心もつなげる必要があるのだ。


聖獣の寿命は人間と比べるべくもなく長い。

だから他の種族から伴侶を得る事の多い聖獣達は命そのものを繋げてしまう。どちらか一方が死んでしまったら、もう一方も死んでしまう。それくらい強い術である。

だが遥かに人間としての寿命を生きるよりも長生きできるので聖獣の伴侶としてはその儀式は必要になってくる。聖獣にとっても生涯にただ一度の大きな術ではあるがその伴侶にとっても強い術であることに違いない。

人として生きるよりも遥かに長い時を過ごさなくてはならないという事は人間とのつながりを持ってもその者を見送る側にしかなれない事が多くなるのだ。

友人知人、そして家族であっても…永の眠りを見送るしかないのだ。リィズは包み隠さず柳にそれを伝えた。それが自分にできる精一杯の誠意であると思ったからだ。


「…皆よりもずっと長い時を生きる辛さは…僕には想像できないし…正直怖いよ。でも僕はリィズと一緒にいたい。リィズウェルの伴侶として生きていきたい。もしかしたらこの先後悔する事もあるかもしれないけど…でもきっとそれはリィズウェルと一緒にいる事のできない辛さよりも大丈夫な気がするんだ。…だから…僕を…リィズウェルの伴侶にして?」
柳はすべてを包み隠さず伝えてくれたリィズウェルの誠意に答えたいと思った。


リィズウェルの大きな掌を取り、そっと自分の頬に当てて顔を摺り寄せた。
(リィズウェルの手…安心できるのは…ここだけ…)
「僕をリィズウェルのものにして?」
「…柳…」
リィズウェルは柳の顔を両手で挟むようにしてそっとキスを落とし抱きしめた。


この華奢な体であの炎に耐えそれを助けることのできなかった己を、すべてを捨てさせ自分を選ぶ事しかできないような状況をつくってしまったリィズウェルを選んでくれた柳を…心底、愛おしいと思った。


誰よりも何よりも愛し、誰からも何ものからも守ろうとリィズウェルはひそかに誓った。
「柳、愛してるよ…」
またリィズウェルは柳と深く口付けあった。


その口付けだけでもう何も考えられなくなってしまった柳はされるがままにリィズウェルに首元や胸元に愛撫を受けていった。

 

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