☆ ★恋は盲目 ☆ ★

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夕食を亮平と俺の家で食べ終わって、片付けも済んで一息ついた。


…講義の間も今の今まで引っかかっていた事を切り出すタイミングを俺はずっと計っていた。

亮平はいつも通りやっぱり少食だったがそれなりに食べる事が出来たのでちょっとほっとしている。顔色も悪くないし…ちょっと深刻っぽい話になるけど大丈夫だよな。って言い訳か…俺、かなり緊張しているかも………



「あのさ…亮平…」
「ん?なぁに?」
ずっとテレビに釘付けだった亮平がこっちをみて小首をかしげた。くそぉう!かわいい………ってちがう!!我を忘れる所だった。



「俺がさその大学のミスの…」
「小林さん?」
「……その女が腕組んできたり、酔っていたとはいえ彼女を自宅に連れ込んだりしたのに…何とも思わなかったのか?」
亮平の顔をまともに見ることが出来なくて俺は少し顔を俯けた。



「ん〜…だってそれは邦昭の交友関係でしょ。僕が口出すべき事じゃないかなと思う」
その言葉を聞いて俺は、ばっと顔を上げて亮平の顔を見た。え?俺の交友関係だから…?



「それってどうでもいいって事?」
俺が他の娘とかかわりがあってもいいって事か?


「ちょっとちがうかな?邦昭には邦昭の付き合い方があるから僕は関わらないだけだよ」
結局そんな事関係ないって事だよな。


俺ってもしかして一人で空回りしていたのか?俺は恋人まで行かなくても亮平と友情以上にはなれていると思っていたのに!



ただの道化じゃないか?



「………そうかそうだよな。結局俺たちには体の関係だけなんだよな?」
自嘲した。


どこまで滑稽なんだ?


俺だけか…亮平に話しかける人間全てに嫉妬しているのは。どうしてだ?俺だけに心を赦してくれていたんじゃないのか?どんどん嫌な考えばかり浮かんでくる。



「何言ってんだよ?邦昭。そんな…」
亮平がまだ良くわかっていない顔をして俺の顔を覗き込んでくる。


一気に愛しいはずの亮平に対して怒気が込み上げてきて…


「俺たち、セフレなんだろっ!?」


思ってもいない事が口から飛び出した。俺はこんな事がいいたいんじゃないっ。でも胸の内に蟠るどす黒い感情がコントールできない。


「結局俺たちは体の関係しかしてこなかったよな!どうでもいいんだろ俺の事なんて!ほっとけよ!関係ないだろ?!」
くそ!感情が暴走してる。亮平の顔が見られない。




「……恋人じゃないの?」




……え……?


今まで真っ黒に支配されていた頭が亮平の声によって一瞬で真っ白になった。


…恋人…?


「あ…うん…ごめん。やだな…恥ずかしい。僕…邦昭を恋人だと思ってた」


呆然として言葉もない俺の前で亮平が悲しい笑顔で話している!違う!違う!!違う!!!俺はこんな表情を亮平にさせたいわけじゃないっ



「邦昭いつも優しくしてくれたし…僕が食事きちんと出来ていないからいろいろお世話してくれたのを僕が勝手に勘違いしたんだ」
細い両手を握り締め合いながら必死に話をしている。今にも泣いてしまいそうな…笑顔で…



「亮っ…」
俺の声に被せるように亮平が言葉を繋ぐ。
「あっあのね。僕ね、どうしてスキって言っても邦昭から答えがかえってこないんだろうって。いつか言ってくれるかなって…思ってた」


愕然とした。俺はそんな肝心な言葉もなしに亮平の…大事な人の…身体を抱いたのか?



「…うんっ…反って思い知らされてよかったんだ。………僕…思い上がってた。邦昭に愛されてないって自分で気付くべきだったんだ……」


「待って、亮…っ」
俺に喋らせまいとするみたいに亮平は息をつくひまもなく畳み掛けるように…自分に納得させるようにしゃべっている。思わず亮平の腕を掴んで話そうとするが亮平の方が早かった。


「ごめんね…邦昭。僕あなたに不快な思いをさせるつもりなんてこれっぽっちもなかった。でも……僕の…この思いこそが迷惑だったん…だよ…ね…」


亮平の大きな目から我慢しようとしているのだろうが…大粒の涙が零れ落ちる。俺は言葉もでなかった。ただ掴んでいる腕に力を入れるだけだった。



「ごっ…ごめ…ふぅっ……泣く…つもりは…無かった…んだけど…」
ハラハラと涙を落とす亮平…あの時なんのリアクションも無かったのは…俺をなんとも思ってなかった訳ではなくて…



俺を全身で信じてくれているからこその、恋人として全幅の信頼を俺に向けているからこその反応だったのに…俺はそれを取り違えてしまった。なんて馬鹿なんだ…



「…えと…邦昭…手…はな…して…?」
涙に濡れた手が亮平の腕を掴んでいる手に重なる。


涙が…まだ止まる気配もないのに亮平は笑顔を見せようとする。その姿に酷く胸が痛んだ。

なんだよ。
本当に俺は道化じゃないか。


結局一人で空回りして…嫉妬して…亮平を責めて…俺なんて肝心の言葉一つさえ亮平にあげていないじゃないか。亮平の信頼を力ずくでちぎったのは俺自身じゃないか。筋違いな感情で亮平を泣かせたのは俺じゃないか。



「……っ!」
腕の中の亮平が息を詰めたのが分かった。


体も強張っている。俺に亮平を抱きしめるか資格なんてないかもしれないけど…でも誰にも渡したくない。卑怯でもなんでもいい。


「ごめん。大事な言葉一つ伝えてなかった」
亮平抱きしめた亮平を放して顔を覗き込んだ。


「亮平。大好きだ。愛してる。俺と付き合って欲しい」


……今更虫のいい話かもしれないが…亮平がもう嫌だといっても受け止めなくちゃいけない。俺の責任だ。俺が結局大事な人を遠ざけるような事ばかりしていたからいけないんだ。



「くにあき…くにあきぃ…僕で…いい…っの?」
またボロボロと亮平は泣き出した。その手は俺の両脇の服を指先が白くなるまで力を込めている。


「お前じゃないとダメなんだ。亮平こそこんな俺でいいのか」
腕に亮平をしっかり抱きこむと、躊躇いがちではあるが亮平が両腕を俺の背中にまわした。


「くにあき…だいすき…っ」
俺はたまらなくなって亮平の唇に夢中でキスした。




俺たちは恋人になった。

結局3倍

 

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