■ □ ■よよいの酔い■ □ ■ ・・5・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日は大学の授業が三時間目からだったので俺は昼近くなってから大学に行った。しかしその日は講師の都合で突然休講になってしまった。それ以外の授業のなかった俺は当然むだ足…『けっ』と思いながら構内を歩いていた。
……それは大学という青春を謳歌するのには最適な場所では当然の光景であるにも関わらず…俺は自分の心臓が大きな音を立てて叫ぶのを感じた。
「ねぇ〜ねぇ〜今日みんなで飲みに行こうよぉ」
「そ〜そ〜盛り上がろうよぅ。誘ってもいつも来てくれないんだもん〜」
そういった甘えて媚びまくった声を出している女達。正直いつもなら『気持ち悪っ!』と鼻の頭にシワを寄せて素通りしていただろう。
「いや…だから…」
でも…相手が………彼だった。…今日は大殺界か……?
足早にその場を逃れようとしたがちらりと見た相庭と目が合ってしまった。うっわ〜やっべ〜っ目があっちまったぁ!!!………ってただの友人関係ならそんなもん気にする必要もないか?そうじゃん。俺ただの友人なんだし逃げる必要ないじゃん。
ツキンと胸が痛いような気がしたが無視した。今はそれにかまっていられない。逃げる必要がないと頭の中で思いながらも身体は早足にその場をのがれるべく構内に急いで入った。ちらっと後ろを見ると人が増えていた。相庭はその中心にいる。それを見てまた俺の心臓がツキンと痛んだ。
あ〜も〜ダメじゃんか〜!!すでに手遅れだよ…俺はかなり惚れっぽいところがある。しかも一度好きだな〜と思ったらかなりしつこく思う所があったり…特に抱かれてしまったり、優しくされると弱いんだよな…。ツキンと断続的に痛み続ける胸だけが俺の本音を叫んでいる。
あ〜もぅっ!!今までの経験から抱かれたりしたら相庭から俺は逃げられなくなるのは分かっていたけどっ!記憶にない以上俺はお出かけ時の優しさだけにやられたのは確実だ。キスどころか手すら握っていないというのに…
ノンケは罪をしらない。友人のような関わりでも俺がゲイである以上全ての行動が想うきっかけになりえる事を。知らない事は罪だと言うが…それは異性間だけに通じる事。同性間ではそもそも存在しない感情なのだから責める事はできない。
パタッ パタッ パタタッ
手に熱い液体が落ちる感触を感じた。そこを見ようとしたが涙が滲んでいる瞳では全てがぼんやりとしか見えない。
パタッ パタタッ パタッ
涙だけが零れる音をたてている。俺は声も無く泣いた。
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